60b.jpg会長 小川 健さん

最上の特色を強みにしていく
~都会で培った技術やつながりを活かし故郷で創業~

●どのような会社でしょうか

 当社は、財布の専門メーカーです。財布の他にもパスケースや名刺入れ、ストラップやキーホルダーといった小物など、主に皮革を使った製品を製造しています。その他には古くなった硬式野球ボールを再生する事業も営んでおります。ボールをリサイクルすることにより新球製造時に比べ二酸化炭素排出量が大幅に削減され、またコストも削減されます。再生ボールを通じて野球を愛する皆様と関われるなど、企業活動として最高の社会貢献であります。夢は再生ボールが公式球として使われるようになることです。

●新庄で創業した経緯は

 私は尾花沢市の出身で、学校を卒業した後に、東京の大手製薬会社に就職しました。そこでは、病院に薬を売り込む営業職であるプロパーをしていました。その後、様々な縁やきっかけから、大手の皮革会社に転職をしたのです。その会社では、革細工の職人に原材料の皮革を卸していました。原材料を販売するだけでは面白くなかったので、製品に加工して付加価値を付けようと、職人の技をこっそりと学んでいました(笑)。今の仕事につながる技術は、若い頃に仕事を通して身につけたものです。
 雪国生まれの私は、いつも心のどこかで故郷の光景を思い浮かべていましたし、いずれは帰りたいと思っていました。そんな時、肘折温泉で開かれた高校の同級会に参加した際に、会社を営んでいる同級生から「新庄に戻らないか」と誘いを受けたのです。同じ時期に新庄中核工業団地への誘致のお誘いを受けたことから会社を設立し進出することにしました。

●人との縁がきっかけなんですね

 はい。企業の運営には人との縁はとても大切なものです。製薬会社にいた頃は、病院の医師や薬剤師、看護師とのつながりを大切にしました。当時、私は標準語を話しているつもりだったのですが、どうしても新庄弁が出てしまい、それが印象的だったらしく、誰からも覚えてもらいやすかったことも幸いしました(笑)。
 皮革会社に勤めた頃に取り引きしていた会社とは、今でも付き合いがありますし、当社の創業の後押しをしてくれました。人生で、人とのつながりや縁は大事にすると良いと思っています。

●これからやってみたいことは

 東京など都会のせまい住宅で不満を持っている人も多いですね。
ぜひそういった方、特に手に技を持った職人に、家族みんなで新庄に引っ越してきていただきたいと考えています。住まいは空き家に住んでいただき仕事は当社から発注します。
 都会の人は、地方には仕事がないと思っているかもしれません。最上地域の企業はがんばって給与を上げて、地方でも豊かに暮らせるという環境を作っていかなくては、人はなかなか増えないと思います。
空き家の利用を図りながら、子育て環境や恵まれた自然を最上地域の強みとして都会の人に向けて発信し、移住を積極的に促していきたいですね。

●若い人へのアドバイスを

 社員には、他人よりほんの少しでも優れたものを身につけていこうと言っています。自分自身に、知識や経験、技術やノウハウなど、ほんの少しで良いから人と差をつけられるものを増やしていただきたいですね。少しの差をつけるにも、多くの努力をしなければなりません。それは他のことに向かう自信になりますから、「私にはこれがある」という強みを持ち、常に磨いておくことが大切です。それに、強みは人に教えてあげることもできるのです。自分の強みを活かし、教えてあげることで人との縁を作っていくことも大事だと思います。


60c.jpg2012年度入社 二戸美由紀さん

●何を担当していますか

 当社では、「ルエゴ」という革製品自社ブランドがあり、この製品の裁断から出荷まで担当しています。
原材料を発注してから、裁断機械でパーツを製作し、加工工程に渡します。その後、出来上がった最終製品の検品から箱詰め、出荷も行いますので、自社ブランド品に関する全工程を見渡す役割をしています。

●製品には多くの種類がありますね

 はい。デザインが同じものでも、それぞれに色やサイズが違います。また製品には、複数のデザインがありますので、全部で100種類以上はありますね。

●気を遣う点は何でしょうか

 製品にひとつでも傷や汚れがあると出荷はできません。そのために作成にはとても気を遣います。例えば、裁断の時には、革に傷が入らないように注意しますし、パーツの組み立て段階や出荷の時でも細心の注意を払って扱います。
 すべての工程でトラブルがないように管理していますが、万一、傷がついてしまった場合にはその対処を行うのも私の仕事です。

●この仕事に就いた経緯は

 私は絵を描くことやモノづくりが好きで、特技を活かした仕事がしたいと思っていました。
高校を卒業してから専門学校に進み、和菓子を作る仕事に就きました。その後、花屋でも働いたこともあります。それらの仕事で、季節感や色合いの組み合わせを考えたり、用途に合わせた提案をお客様にしたりなど様々な経験ができました。それらの積み重ねは、現在の仕事にすべて生きていると感じます。

●最上地域はどんな印象ですか

 私は運良くこの仕事に巡り合い、夢だった職人の道に進むことができましたが、最上地域で希望通りの職を見つけられる人は少ないと思います。働く場所や選択肢がもっと増えて欲しいと思いますね。
 また、学んだ専門学校は庄内地域でしたが、庄内には積極的な気質の人が多く、同じ山形県内なのに最上と雰囲気が違いました。最上地域にもそういう積極性がもう少しあっても良い気がします。

●今後の目標を教えてください

 私には「手に職をつけたい」という目標があり、その時々にできることを頑張ってきました。今後は、当社のブランドや会社の仲間と考えたものをもっと広めて、たくさんの方に使っていただけるように育てていきたいと思っています。それが今の目標です。

【先輩からひと言】
「修理の依頼にお客様からの手紙が添えてあることもあります。作った製品に愛着を感じていただける、やりがいのある仕事ですよ。」

【おしごとPoint!】
皮革製品の製造は、デザインの違いだけでなく、使われるパーツが多く多種多様。
製作工程で支障がでないように、パーツの形や色、材質、表面の仕上げなどの違いをすべて覚えなければなりません。