園長 井上 亘さん
自然の中で暮らすことの大切さ
~幼児教育を通して価値観とコミュニケーション力を伝えたい~
◆どのようなこども園ですか
当園は8ヶ月から5歳までの乳幼児保育を中心として、一時預かりのサービスを提供し、その他に、学童保育と子育て支援センターを運営しています。学童保育と子育て支援センターの運営は金山町からの委託を受けて行っているものです。
私は千葉県の出身で、東京の大学を卒業した後に東京にある商社に就職し仕事をしていました。30歳の時にこの金山町に移り住みました。
◆移り住んだきっかけは
30歳までの私は、都会の競争社会の中で、勝つことが良いこと、たくさんのお金を得ることが幸せという価値観を持って生きてきました。住む場所についても、都心に近いところに住むのがステータスが高いという、いわば即物的な価値観を持っていたんですね。
ところが、結婚して30歳で子どもが生まれた時にふと思ったことは、このままの生き方でいいのだろうかと、自分の子どもを育てる環境を考えたことが、自分の人生観への疑問にまで繋がっていきました。自分の子どもをどんな場所で育てるのが良いのか、子どもにどういう人生を歩んでほしいのかを妻と相談し人生を方向転換したのです。
移住先として様々なところを探しましたが、そのときに環境教育という言葉に出会い、これからは、その環境教育や循環型の社会に関わっていきたいと考えた時に、この金山町が最適なフィールドだと考え、移住先に決めました。自然とともに生きている町で、勝ち負けではない価値観を持った仕事をしようと思ったのです。
改めて通信制大学で幼稚園教諭の免許を取得し、30歳の時にに移ってきました。私の両親は60年以上前から千葉県で幼稚園を運営していましたので、私の中にも幼児教育や保育に対する熱意が眠っていたのかもしれません。移り住んでから21年になります。
◆最上地域の印象をお聞かせ下さい
自然とともに暮らしているということに尽きます。食べ物や雪など人間の都合にとって良いことも悪いことも含め、自然の恩恵と脅威に合わせて暮らしているという実感は、金山に来て初めて思ったことで、これは都会の生活では絶対に感じられないものです。産業や経済を中心に他国との競争に明け暮れ、勝ち負けを人生の尺度にする価値観そのものを否定するわけではありませんし、国を引っ張る原動力となってることもあると思います。しかしそれが人生の全てではないと思うんですね。
都会で暮らしていると、自分の人生をすべてコントロールできるかのように錯覚してしまいますが、人生とは本来ままならないものです。田舎の良さは、自分の力ではどう にもならない大雪や、四季の移ろいなどの全てをそのままに受け入れて暮らしていく事の大切さです。私たちが園の運営と遊びを通して、この自然を原体験として子どもたちに伝えたいと思っています。また体験だけではなく、民主的なコミュニケーションも必要です。
◆民主的なコミュニケーションとは
自発的に発言し、他者の意見も受け入れる、そういうコミュニティーに主体的に関わっていくことが民主的なコミュニケーションです。自分の意見を伝え、他の子の意見も取り入れる中で、どう合意を形成していくのか、また合意したことには団結してまとまっていくこと。その後の人生で彼らが大人になっても大切な部分は、こういう早期教育の中での学びがとても重要です。また、民主的コミュニケーションを学ぶ事は、幼児教育だけでなく学校教育でも必要だと考えています。
◆現代の若者はコミュニケーション能力が下がっていると言われます
それは若者の側の責任ではなく、教え伝えてこなかった教育の問題ではないでしょうか。民主的に話し合い、合意を形成するというプロセスを教育を通して若者に学んでもらう、そのためには、教える側の教員や大人の側にそのスキルや概念をしっかりと学んでもらうことがまずは先と思っています。
平成23年度入社 笠原朋恵さん
◆どんな仕事を担当していますか
今は、担当させていだたいたお子さんと一対一で関わり、保育を通して様々な支援を行うという仕事を受け持っています。
◆このお仕事を志した経緯は
私は、小さな頃から大人になったら幼稚園教諭か保育士になりたいと思っておりました。ですので、このこども園に就職ができて自分の夢が叶いました。高校を卒業した後、山形の短大に進学し保育について勉強しました。短大の勉強では、保育園や幼稚園の仕事というのは、当初思い描いていたよりも、やるべきことがとても多いという感じを受けましたね。
はじめは子どもと遊んでいたり、連絡ノートに書き込んむことがこういった仕事の主な部分と思っていましたが、例えば発達心理学のように子どもの考え方、見方と子どもの目線で考えたり、共有したりする大切さを理解するなど専門的知識を学ぶ必要もありましたし、実習の前などは一日の流れを記した書類を作成したりもしまして、覚えなければいけないことが多く大変でしたね。
◆社会人になって良かった事は
何より私の小さい頃からの夢が叶いましたので、いろいろとサポートしてくれた家族も喜んでくれましたし、嬉しかったです。初めていただいたお給料で両親にプレゼントをあげました(笑)。
◆子どもの気持ちがわかるコツは
一緒に遊んだり、スキンシップをしているうちに信頼関係が生まれますので、困ったことが起きた時も、お子さんの方から話かけてくるようになります。そういった、日々のコミュニケーションの積み重ねが大事なのかなと思います。また、話しかけてもらったりすると信頼されているんだなと私自身も喜びを感じますし、それがやりがいになっています。私は今、特別支援員としての仕事を主な業務としていますが、園に来る子どもたちとは何らかの関わりがありますので、毎日50~ 60人ほどのお子さんと関わっています。
◆仕事の休日はいつになりますか
当園では土曜保育も行っておりますので、職員のシフトとして月に1回の頻度で土曜保育を担当します。
それ以外は土曜、日曜祝日がお休みとなります。休日は、友達と買い物に出かけたりしていますね。
◆後輩へアドバイスをお願いします
私は口下手で、自分から積極的にコミュニケーションをとったり、アプローチするというのは苦手です。私と同じような性格の人もいると思うのですが、将来の仕事を選んだり決めたりする場面では、きちんと自分の気持ちを伝えないと、後で絶対に後悔しますので、勇気をふるい起こして自己表現してほしいです。また、実際に就職を考える時期には自分の周りにいる人に相談することも大切です。私の場合は、家族や友人の他に、3年間担任していただいた高校の先生に相談して、それが一番の後押しになりました。
普段の自分をよくわかっていてくれる先生の言葉は心強いですから、学生生活では、友人とともに先生も大事にして過ごしてほしいと思います。
遊びに使う工作物の作成
連絡ノートへ書き込み