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代表取締役 栗田伊智子さん

若い力を積極的に取り入れたい 
~製造技術の継承と人材育成を見据えて~

◆どんな会社でしょうか

 当社は衣料品製造の専門会社です。主に水着やダウンジャケット、革製品、ミリタリージャケットなどのカジュアル衣料品に関して、オールマイティーに対応しております。
 勤めている方は女性が多いですね。現在の平均年齢は33歳ですので、若い方が多い職場だと思います。私は、今現在の平均年齢よりも10年後の会社の姿を常に逆算しながら新規雇用を考えています。
 縫製業というのは人の手で行うものですから、技術の習得にはそれなりの時間がかかります。そのために、縫製技術を継承していく期間を考えながら若い方を採用していくという経営になるんですね。

◆育成にはどのような工夫を

 現場のチームリーダーや役員には、若い従業員に対して指示や指導がうまく伝わるように、言葉遣いに気をつけて欲しいと言っています。また、製造現場ではなるべく同世代の従業員でチームになるように配置しています。その方が同年代同士で和気あいあいと仕事ができますし、意思疎通や効率の面でも良いようですね。

◆経営に携わる経緯を教えて下さい

 私は若い頃に別の会社で事務の仕事をしておりまして、その頃にスポーツとしてボートをやっていたんですね。そのコーチを務めていたのが、この会社の前社長にあたる方だったんです。ボート部で知り合ったのをきっかけに、この会社に移りました。その後もボートを続けまして、沖縄国体にも出場しました。その頃には、いつか国体に出場したいという自分の積年の夢も叶いましたので、会社を辞めようかと思っていたのですが(笑)、社長から引き止められる形で留まりまして、現在の職務へと繋がってきました。ボートがもたらしてくれた縁ですね。

◆ボートに憧れがあったんですか

 今でもそうだと思いますが、昔の最上地域にはなかなか目立つものがなかったですよね。そんな中、水面で競うボート競技を見て、ぱっと華開くような思いを当時の私は感じたんでしょう。それからは夢中でした。今の最上地域にあるものの中に、そんなふうに若い方を感激させられる何かがあったら良いのですが。

◆前社長の息子さんも在籍しているとお聞きしました

 はい。普通であれば血を分けた息子に会社を渡したいと思うのが親心だろうと思いますが、前社長は会社を私に託してくれました。その気持ちをありがたく感じておりますし、私としては息子さんにこの会社を受け渡さなければならないという使命感があります会社を存続させ、さらにより良いものにしてお渡ししたい、それも私の経営目標のひとつなんです。

◆最上は人口減少が進んでいます

 はい。縫製業は人の手でしか出来ない仕事ですので、労働人口の減少は直接の影響があります。当社は短時間のパートなど、少しの時間で働きたいという考えの方も受け入れるよう、雇用形態を柔軟にしています。それも、なるべく若い方に仕事をしていただきたいという気持ちの表れなんですね。これからこの地域を活かせるか、そうでないかは、すべて今の若者達にかかっていると思います。そのためにもまずは多くの若者に地元に残っていただきたい。残るためには何よりもまず働く場所が必要ですから、私たち世代や企業経営者は、その雇用をいかにして守りまた拡充していくかが、まさに目の前の課題なんだと思います。

◆若い人材に求めるものは

 特にありません。どういう人材になってほしいかは会社が育てるものですから。成長段階での教育は家庭や学校が行いますが、いったん社会人となって会社に来たからには、その後の教育は会社が行うものです。 

◆地域との関わりは

 当社は仕事は中央から直接に受けている形ですので、地域との関わりというのは薄いですね。これからは、もっと地域に目を向けていきたいと考えています。


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平成18年度入社 髙橋麻美さん

◆仕事では何を担当していますか

 当社は、生地の裁断から最終的な縫製まで衣料品の一貫生産を行う会社ですが、私は製品の最終工程を担当しています。そこでは、他の部署が作って流れてきた各パーツを組み合わせて最終的な衣料品の形にしていきます。
 私は平成18年度に入社しました。最初はネームを作ったりアイロンがけの作業から始まりました。それから徐々に最終工程の作業に変わっていきまして、仕事で使うミシンもそれにつれて変わっていきました。勤務は、月曜日から土曜日までで、時々土曜日もお休みになります。

◆最終段階の工程は、着心地や見栄えを左右しますね

 はい。とても気を遣いますし、プレッシャーも感じます(笑)。私はせっかちな所もあるので 仕事をどんどん進めて行きたがるんですが、時々振り返ってペースを最適なものに調整するように心がけています。作業のスピードも大事ですので、あまり慎重過ぎてもだめです。仕事の質と量のバランスを常に考えていないといけないですね。
 一つの服にしても、前工程から各パーツ、最終品まで様々な工程があり、いろいろな部署と関わりますから大切なのはチームワークです。質の良い服を作るためには他のチームと良い関係を作っておくということも大事だと思いますよ。

◆良い関係を作っていくコツは

 休みの日なども仲間や後輩達と飲みにも行きますし、仕事の場を離れていろいろな会話をするというのが、とても役立つと思います。私は入社当時から先輩に恵まれまして、仕事やプライベートの悩みまでいろいろと相談に乗っていただきました。この会社で仕事をしていく上で、先輩の存在がとてもありがたかったと思います。今は若い社員も増えて、私がそういった役割を担うなければいけないような立場になってきましたので、その先輩を見習って、後輩達と良いコミュニケーションをとって、職場が良い雰囲気になるようにしたいなと思っています。

◆この会社に入って良かったことは

 毎日、服に触れていますので、仕立ての良し悪しが見分けられるようになりました。友達が買おうとしているといった服にも、よく見て「もしかしてほつれそうだよ。」などとアドバイスができたりします(笑)

◆後輩へメッセージをお願いします

 学生の人たちには、学生のうちに自分が目指す仕事は何なのか、本当に自分のやりたいことなのかよく考えてほしいと思います。そうは言っても、実際に社会に出て会社に入ってからやりたいことに気付く方が多いのかもしれませんが。また、どんな仕事でも嫌になる事は必ずあります。そんな逆境に直面してもすぐ辞めたりせずに、もう一踏ん張りして欲しいですね。

◆将来の希望は何ですか

 地元に残っていたいです。もっと若い頃はどこか違う土地で一人暮らしをしたいという思いもありましたが、実家暮らしが長くなるほどやっぱり地元はいいですよね(笑)。家族や親しい友達に囲まれて暮らす故郷がやっぱり良いです。

12d.jpg各パーツを合わせる最終縫製工程