73b.jpg代表取締役社長 鈴木富士雄さん

最上川の魅力を育てて発信していきたい
~地域を変えたいという気持ちを事業の原動力に~

●どのような会社でしょうか

 最上峡を川面から楽しむ「最上川舟下り」や「道の駅とざわ」の運営の他、関連会社で戸沢村からの委託を受けて、地域の路線バスやスクールバスの運行を行っています。
 昔、最上には目立った産業がなく地域全体が寂しい時代がありました。なかでも、戸沢村は最上川の水害と豪雪で苦しい生活を強いられている村だったのです。当時の生活を支えたのは農業で、収穫がない冬は出稼ぎに行くしかありませんでした。
 そのような苦しい時代でも、紅葉狩りの季節に「作業船で良いから乗せてほしい」と要望があったと聞いています。こういった地元からの舟下りの要望を事業の種として、何人かの有志が出資し、当社の原型を作ったのが始まりです。根底には、貧困や出稼ぎからの解放という課題がありました。これを改善したいという気持ちから、思いついた種を観光事業にまで育てていこうという発想になったのです。

●「ソーシャルビジネス」ですね

 そうです。当時は、そのような言葉や考え方はありませんでした。現状を何とかして変えたいという強い気持ちから始まった事業です。本来、企業とは社会の中で役に立とうと活動するものですから、私利私欲ではなく、世のため人のためでなければ存続できません。特に当社は、最上峡を事業の軸に据えた観光会社ですから、この地でなければ成り立たない仕事です。他業種のように、状況に合わせて他地域に移るということもできません。それだけに、常に地域の課題に目を向け、真剣に取り組まなければいけないという意識をより強く感じております。地元への愛情や情熱が事業のべースとなっているのです。

●日本の本来の姿である田舎への観光が増えていると聞きます

 はい。当社は1973年、時代に先駆けた雪を利用した観光として「雪見舟」をスタートさせました。現在は、海外からの観光客、特に「雪を見てみたい」という台湾のお客様のニーズが増えたことで、蔵王の樹氷と並び、冬季の山形の観光スポットにまで成長できました。しかし、現在の状況に安住せず、事業の核となるものを絶えず磨いていかなければいけないと思っています。
 経済が豊かになるにつれて、道路、空港、港、新幹線延伸など交通網の整備拡充を契機に集客を伸ばすことができましたが、観光業は時代の変化に影響を受けやすい業種であることを忘れてはいけません。事業の主役は、いつの時代でも魅力的な商品ですから、常にアンテナを張り、時代を見る感覚を磨いていようと思っています。

●事業の資源で最も大切なものは

 サービス業において、最も重要な資源は「人」だと思っています。地域も企業も、結局は「人」ですから、光る人材がいなければ地域もそこで活動する企業も輝けません。
 若い世代が少なくなり高齢化が進むなかで、仕事を求めて若者が都市に流出することが深刻化しています。この状況下で光る人材をどうやって確保するか、最上の企業や地域にとって今がまさに分水嶺(方向が決まる分かれ目)だと思います。

●どうすれば光る人が集まりますか

 それには、組織のトップが「この地にはこういう魅力がある」、「この仕事にはやりがいがある」、「こんな企業にしたい」という強い想いや将来のビジョンを熱く語り、広く発信していく必要があります。
 良い企業とは、経営が安定しているだけではなく、お客様、取引業者、社員の、事業に関わる皆が満足でき幸せを互いに分け合える会社が理想のかたちです。まずは自社の理想を掲げて、あらゆる機会を使い発信することです。そうすれば、共鳴する人が必ず集てくると信じています。


73c.jpg2015年度入社 柿崎涼介さん

●どのような仕事ですか

 主に、最上川舟下りの観光船の船頭として、船長兼観光ガイドをしています。その他、外回りの営業も担当しますし、SNSでの情報発信や遊覧バスの運転も行っています。様々な業務を担当しているので単調ではなく、楽しくやりがいを感じながら仕事をしています。

●この会社に入ったきっかけは

 私はUターンでの転職で、この会社に入りました。前職は、天童の旅館でフロントマンをしておりましたp
そこでは、日々のフロント業務の他に、キャンペーンスタッフなども経験しました。
 旅館で作る観光ツアー企画のコースには、最上川舟下りが必ず入っていました。私は金山町の出身ですので、親近感を感じて記憶に残り、覚えておりました。

●異なる業種への転職ですね

 自分で言うのも変ですが、私は野一心家で(笑)、いままで様々な勉強をして資格を取得してきました。
学生の頃は、勉強はあまり好きではなかったのですが、社会人になってから知識を吸収する楽しさに改めて気づいたんですね。楽しさを感じる一方、せっかく身に着けた知識や資格をこのまま持ち腐れにするのも残念と思っていました。自分の知識や資格を仕事で活かしながら地元のために役立てるのではと考え、この会社に転職しました。前職とは異なる業種ですが、観光ガイドの仕事は、持っている知識が話の引き出しになる財産です。
 当社は様々な社会人経験をお持ちの方が集まってきており、先輩の経験談を身近に聞くこともあり、とても有意義な仕事だと思っています。どんな業種を選ぶにしても、若い頃に自己投資をして自分の能力に磨きをかけることは、楽しく人生を切り拓いていくために大切です。
 時には、自分を中心に物事を考えてみれば、勉強の辛さや仕事での悩みも自分磨きと割り切れます。また、気力も鈍らないと思います。

●この会社のご感想は

 社員が何百人もいるような大企業では、経営者と直接話をする機会はほとんどありません。その点、中小企業は、社員全員の顔が見えますし、社長に自分の意見や提案を直接言うこともできます。これこそ私が仕事で望んでいたことです。自分の意見の反応を得ながら、やる気や実力次第でいくらでも上を目指していけるのは、中小企業ならではの魅力だと思っています。

 

【先輩からひと言】
観光は、自然や地形などの環境や、食・お祭りなど地域の慣習そのものを資源としてなりたつ産業です。観光会社は、それらの見せ方を工夫することで、観光資源の価値を高めています。

 

【おしごとPoint!】
会話に自信を持つには、家族相手に、とにかく5分間とぎらせずに話す「5分間会話」を毎日やってみるのがおススメですよ!