代表取締役 井上裕之さん
印刷物が持つ手触りを大切にしたい
~個人から企業までさまざまな印刷ニーズに対応~
●どのような会社ですか
当社は、地域の印刷物全般を製作している会社です。お客様が企業の場合は、例えば名刺や封筒、納品書や請求書などの書類が多く、県や市町村の場合には、広報誌やポスター、パンフレットなどが多いですね。
個人のお客様からは、年賀状や喪中はがき、その他には、学校新聞や地域のお祭りをお知らせする印刷物の依頼があります。これらのレイアウトデザインから印刷工程までを行っています。
●創業はいつ頃でしょう
1950年です。祖父が創業し、私は3代目の社長となります。当社が創業した時期は、第二次大戦後まもなくの頃で、日本全体が復興の時代でした。
祖父は読書家で、普段から本や印刷物になじみがあった人でした。祖父が戦後世の中が立ち直っていく様子を見て、今後ますます印刷物が重要になると考え、この印刷会社を設立したと聞いております。
●社長も本がお好きと聞きました
はい。私も本が好きで、特に小説をよく読みます。最近は、文章をパソコンのディスプレイやタブレットで見ることが増え、活字離れが進んでいます。しかし、紙に印刷された書物は残っていくと思っています。
デジタルの便利さはありますが、ある程度の年齢になると、原点回帰というか、あらためてデジタルにはないものを求め、紙の本が良くなってくるんですよ(笑)。音楽の世界でも、インターネットを通して音楽データをダウンロードすることが主流になっていますが、同時にアナログのレコード盤も見直され始めています。
また、カメラでは、デジタルカメラ全盛の時代に、風合いを感じられるフィルムの再生産が始まったりしていますよね。
同じように、触れたときの手触りや紙やインクの匂いとともに、その時々に自らの中に刻む思い出が、本や印刷物として手元に存在し続けてくれる、ある種の安心感は、デジタル書物には代えられない紙の書物の良さであると私は思っています。
●会社を引き継いだ経緯は
東京で大学生活を送った後、印刷業や広告代理店に勤務して、地元に戻りました。いずれは、この会社を継ぐつもりでしたので、企画やデザインを学ぶために1年間、同業他社で勉強し、この会社に入りました。地元に戻って27年目、社長業を継いで1年目です。
●最上地域のご感想は
時間の流れが緩やかで、住みやすさを実感しています。都会暮らしの経験から言えることですが、東京は通勤や通学でかなりの労力を取られます。余暇を過ごす余裕もないような気ぜわしい生活は、豊かとは言えないと思います。
現代は、地方で暮らしても情報をタイムリーに得られる時代です。生活する上での不便さは昔に比べてなくなってきているのではないでしょうか。
●ご自身の若い頃と現代に違いは
私が若い頃は、いわゆるバブル全盛期で、今の若い世代より元気がありました。それに比べると、最近の若者は、冒険をしないような、こじんまりした人が多いと感じますね。夢や希望もあると思うのですが、それを熱く語り合ってもらいたいですね。また、ここぞという時に羽目を外して遊ぶというようなパワーも持ってもらいたいです。
仕事の面では、与えられたことに真面目で、堅実に取り組む姿勢を持っています。現代の若者の新しい提案や発想の自由さなど、若い感覚を仕事の現場にもっと取り入れていけば、会社全体が活気づくのではないかと思いますね。現代の若者の個性を、前向きに受け入れていきたいと思います。
2017年度入社 長倉太一郎さん
●どんな仕事を担当していますか
営業を担当しています。仕事の内容は、お客様のご希望を伺いながら、当社の印刷現場との間で様々な調整を行っています。私は、印刷やデザインに、もともと興味を持っていました。転職して2017年にこの会社に入社しました。
●仕事で大変な点は
お客様からの依頼が、名刺や伝票など内容が決まっているものであれば、受注後に印刷現場に作業を指示し、納品までは短期間で済むため、大変な点はあまりありません。一方、印刷内容の文章や色、デザインをお客様に伺いながら決めていくような印刷物や、納期の直前で内容を大きく変更するような場合には、印刷現場に無理をお願いしなければならず、その分大変さを伴いますね。
営業の仕事は、様々な業種のお客様の、それぞれの分野を少しずつ垣間見ることができます。それがとても勉強になります。また、人と話をすることで「そういう考え方があるのか」と驚くことがあります。その度に自分の中の経験という引出しが増えていく感じが、この仕事の面白さに繋がっています。
●営業職は人と話すことが得意でないといけませんか
いいえ。そんなことはありません。私も、特段人と話すことが得意というわけではないんです。むしろ、初めて会う方とは緊張もしますし、気の利いた言葉もなかなか出てきません(笑)。しかし、上辺だけでその場を切り抜けたりすれば、必ず良くない結果になるものです。
お客様にも、わからない時には「わからない」と言うこと、飾らず自分のありのままで相手と向き合うことが、コミュニケーションで信頼を得るコツなのかもしれません。話す時の注意点としては、印刷業界独特の専門用語があります。一般の方でもわかりやすいように噛み砕いて説明するように気を配っています。
●自分に向いた職業を見つけるには
若いうちに自分の適性が何かわかったり、自分に合った職業が見つかる人は少ないのではないでしょうか。
色々なことを経験してはじめて見つかるものだと思います。考えているだけでは何も始まりません。何事にも挑戦し、経験してみるべきですね。
【先輩からひと言】
印刷物の作製は、絵や写真、言葉や文字の形、色や配置など、多くのことを決めながら進む手間のかかる仕事。
それだけに、調整役の営業職は大切な役割を担います。
【おしごとPoint!】
営業職は、仕事を通して様々な職業のことや、それに携わる多くの人と知り合える、とても面白い仕事です。