52b.jpg参事 狩谷健一さん

最上の豊かな森を地域の糧に
 ~森林資源の永続的な利用を目指して~

●どのようなことをされていますか

 森林組合は、森林を所有者から預かって管理や整備をする組織です。また、山から出された木材を地域の材木業者に供給することで、森林経営も担います。
 最上地域は、山形県内でも森林が多く木材の蓄積が豊富な場所です。林業はその地域に密着するものです。地域の様々な方と関わりますし、大変やりがいがある仕事ですね。私は、組合の参事として経営企画を担当しています。

●この仕事に就いた経緯は

 私は東京の出身です。若い頃、金山に遊びに来た時に、森林組合の仕事を手伝わないかと誘いを受けたことが林業に携わるきっかけでした。その後もこの仕事を続けることになり、今ではもう23年が経ちました。

●林業とは

 森林は、環境、経済、社会それぞれの面で社会に貢献できる地域の資源だと考えています。この森林資源を適正に取り出すことで調整しながら、永続させていくことが大切だと思っています。
 地球上の地表面の約3割が森林だと聞きます。その3割が酸素や淡水を作り出していますから、いつまでも再生可能な資源として管理する必要があります。
 また、林業は木材を取り出すことで、建築や家具、工作の材料、木質燃料と様々なかたちで利用されることで、経済的な価値を生み出します。社会的には、事業体として人を雇用することで地域を支えていくことも使命のひとつです。当組合は、その3つの側面それぞれに寄与できるよう、今後も取り組んでいきたいと考えております。

●事業の将来性は

 長期的な将来性は、大変大きいと思っています。森林を再生可能な資源と考えたときに、日本が昔から持つ高いレベルの林業の技術、知識やノウハウは、今後もっと活かされていくのではないかと考えています。
 最上地域の林業については、木材の提供だけでなく、家具など加工し付加価値の高い製品にして海外に輸出するような取組みも進めてほしいですね。

●最上の印象はいかがですか

 とても良いところです。山形県は全体的に「豊か」というイメージがあり、特に最上地域は豊かな土地という印象があります。それは、人柄の良さ、食べ物の美味しさのほかに、なんといっても「自然環境の豊かさ」です。生活するなら山形県、最上地域はとても良いところだと思いますね。私は若い頃に金山の人を「凄い」と感じたことが、最上に住もうと決めたきっかけでもあります。

●感じた「凄さ」というのは

 農家の方が何気なく草を刈りながら、良く見ると刈った草はまっすぐ一列に並んでいたんですね。それを見て、私は素直に凄いと感じました。様々な手仕事をいずれも上手にこなし、「百のことができるから百姓だ」という言葉は、今でも新鮮に思えます。そんな豊かな文化を持った所で暮らせるのは幸せなことです。

●事業の面では人口が多い都市が有利では

 確かに、商売としてモノを売るためには人が密集した土地の方が有利です。例えば東京圏は、東京湾を中心に100km圏内に日本の4分の1の人口が集中しています。でも、そんなに人が集中した場所で人生を過ごしたい、生活したいとは私は思いません。
 これからは、若い人も、仕事のスキルを身につければ、田舎で豊かに暮らしながら、都会で稼ぐといった働き方が選べるようになっていくのではないでしょうか。例えば、生産などの現場作業を最上で行い、セールスを東京で行うという形です。これからの世の中は、こういったチャンスが増えてくると思います。


52c.jpg2015年度入社 高倉 智さん

●どんな仕事を担当していますか

 山に入り、現場作業をすることはもちろんですが、森林の境界や面積を定める測量、補助金の申請に関する森林調査、ある時は刈払い機の扱い方やチェンソーでの伐倒方法の講習を行ったりします。作業後には進捗集計などの現場管理事務と合わせ、森林整備に係わる業務全般の仕事をしています。

●森林組合に入った経緯は

 私は、高校を卒業した後、東京の専門学校に進学し、工業デザインを学びました。
その後仕事はなかなか続きませんでした。牧場や運送業など、様々な職業を経験した後に地元の新庄に戻ってきました。東京は便利で刺激もありましたが、ごみごみして生活環境が良いとは思えません。私は、東京に長く居続けるつもりはありませんでした。
 新庄に戻り、地元で仕事を探し始めたときに、この仕事を知り、森林整備をやってみたいと考えました。以前から「金山杉」のブランドは知っていましたし、もともと自然や動植物が好きでした。林業なら自然に触れることができるし、地元を守る仕事ということが気に入りました。

●実際に仕事をしての感想は

 森林整備や測量は、山の中が仕事場です。「熊に出会ったらどうしよう」と心配しましたが(笑)、実際には足跡と遭遇する程度で、野生の熊は車の中から見たことがあるくらいです。それどころか、蜂に刺されたこともまだありません。どちらかというと、仕事の大変さや、野生動物に対しての不安よりも、自然相手の仕事という充実感が勝っていますね。
 杉林を適正に間引く間伐(かんばつ)作業は、手入れでさらに木の成長が促されます。その作業ひとつひとつが「将来に続く意義ある仕事ができた」という満足感が感じられるのが林業の魅力だと思います。

●将来の目標は何でしょう

 最上地域の林業がもっと盛んになり、もっと利益の出る仕事になればいいなと思います。そうすれば、若人たちが積極的に林業を選択するようになるでしょう。
 また、林業を担う人が減っていったとしても、それを補えるように重機やパソコンなどの機材を使ったICT林業を今以上に進めていきたいとも考えています。そういった新技術導入のタイミングでこの仕事に入ったので、昔ながらの林業と新しい技術の両方を活用して、この業界を盛り上げていきたいです。

【先輩からひと言】
「どうすればもっと効率よく仕事ができるかを、いろいろと工夫してみましょう。工夫することが楽しくなれば、仕事がもっと面白くできるようになりますよ。」

【おしごとPoint!】
森林組合は、農協や漁協と似た成り立ちの組合組織です。
森林の保全や生産力の向上を目指して事業を行い、地域の森林資源を守る役割も果たしています。