理事長 大場武男さん
地域で幸せに暮らすために
~認知症のお年寄りが暮らすグループホームを展開~
◆グループホームとはどのような施設でしょうか
グループホームは略称で、ここの場合は介護保険法上では認知症対応型共同生活介護事業所といいます。これは認知症になられて普段の生活に支援が必要なお年寄りのために、生活の場をご自宅から移し、専門の職員が対応に当たる施設のことです。ご家族だけではなかなか介護しきれないお年寄りを支援するのがこういったサービスで、認知症のお年寄り同士が共同で生活する「家」であり、また専門の職員が生活の質を向上するために色々お手伝いをする場でもあります。NPO法人やまなみで手がけている事業は、このグループホームだけになります。
◆事業所を展開した経緯は
私は、高校まで最上町で暮らしておりました。卒業後に横浜に行き、仕事をしておりましたが、60歳の時に故郷にUターンしました。戻ってからすぐに、医療や福祉、介護地域づくりといったテーマで1年間ほど勉強会を開いてみたんですね。その時にはのべ200人ほどの方が集まってくれました。
勉強会では、地域課題を話し合い、そこから発展してグループホームを作ろうということになりました。このように多数の賛同者が発起するかたちで始まりましたので、短い準備期間で施設の建設にこぎつけることができました。ですから、私一人が奮闘してスタートしたというわけではありません。課題意識や地元への愛着を共有しているたくさんの方々の思いを核にした住民運動からスタートしたNPO法人です。
◆介護事業を思い立ったきっかけは
私の母親ですね。まだ横浜に住んでいた頃、お盆や正月に帰省すると認知症だった母親が、年々少しずつ症状が進んでいくのを見ていましたし、そのことがきっかけになったように思います。それに、具体的には平成12年から始まった介護保険制度が後押しとなりましたね。
今後は、たくさんの団塊世代の方が認知症介護を必要とする年代にさしかかってきますから、社会的ニーズは一層高まっていくと思います。
◆最上地域のご感想は
残念ながら文化的には遅れているという印象があります。でも、多くの方が勉強されていて、ここを良い地域にしなくてはという思いを持たれていますから、希望は大きいと思いますよ。
NPO法人の活動を通して、特に女性がエネルギッシュだと感じますね。シンポジウムや講演会、映画上映会やコンサートなど色々なことをやっています。
◆今後の活動の方向は
やはり地域課題の解決です。たとえば、最上町には障がいをお持ちの方が就労できる施設はとても少ないんです。障がい者は、子どもや若い頃には家族のサポートを受けやすいのですが、年齢が進むに従って支援が難しくなってきます。そのため仕事をしながら共同生活するグループホームの存在意義は大きいと思いますね。
最上町にも出来たらいいなと思いますし、誰もやらないのであれば、私たちやまなみが何かのお手伝いが出来ないものかと考えているところでもあります。
◆運営目標を教えてください
当ホームでは常勤職員のみの体制でパートタイマーはおりません。職員の方に安心して仕事をしていただきたいですし、そういう安心感が質の高い介護を生み出すと思います。
また、介護事業は介護保険制度上で成り立っていますから国の方針や制度変更で大きく影響を受けます。国の財源が限られている一方で介護を受ける方が爆発的に増えていく将来はもっと財政的に厳しいでしょうから、グループホームの運営も非常に難しくなると思います。
ただ、設立当初の理念を忘れず、地域のためという方向を曲げてはいけないと思いますし、そのためには数字を冷徹に見る経営者の側面と、理念を貫く起業家の部分、この二つを併せ持つことが大切だと思います。いかにして、地域でたくさんの人が幸せに生活できるか、目標はこの一点に尽きると思いますね。
平成26年入社 沼澤 彩夏さん
◆どんな仕事を担当されていますか
主に、入所されている方のための食事作りやお世話をしたり、入浴のお手伝いです。起床から就寝までの日常的なことすべてに関わります。
入所されている方の中には、ご自身でかなりのことまでできる方もいらっしゃいますし、多くの介助を必要とされている方もいらっしゃいます。その方なりの適した介助を心がけながらの仕事になります。
◆この仕事に進むきっかけは
私は高校の頃から、将来は福祉に関わる仕事に就きたいと思っていました。高校を卒業してから旅館に就職し仕事をしていたのですが、結婚を機に最上町に移ってからこのグループホームに就職しましたので、ようやく念願の福祉の仕事に就くことができました。
私は小さい頃に祖母が高齢者施設に入っていまして、そこでの姿を見ていましたので、それをきっかけとして高齢者福祉への関心は幼い頃からあったのかもしれませんね。
◆お仕事で大変なところは
入所されているのは認知症を患っている方ですので、この病気特有の大変さはありますね。ケースとして多いのは、5分や10分ほどの直前にあったことを忘れてしまう点や、同じことを繰り返すことですね。
◆入居者には24時間対応と伺いました
はい。職員は早番・遅番・日勤・夜勤の各シフトで対応します。また、夜間の緊急時では、施設長や理事長が対応する流れになっていますので、職員に直接連絡がくるケースはほとんどありません。
◆仕事をしていて良かった点は
なんといっても利用者さんの笑顔ですね。ただ、認知症をお持ちの方ですから、たとえば一緒に天気の良い日にみんなで散歩に行き、あちこち見て回った時でも、戻ってきてから「楽しかったね。」と話かけても「どこかに行ってきたの?」と聞き直されたりしますが。
利用者さんの体調が安定し、お話がはずんだり、歌を歌ってみたりなど、日々の生活を心豊かに過ごされている様子を見ると、職員としても嬉しいですし、ご家族から感謝やねぎらいの言葉をいただいたりもしますので、そういったことがやりがいにつながっています。
◆後輩世代へのアドバイスをお願いします
介護という仕事はやはり体力勝負です。介助には様々なテクニックやコツがあります。ですが、例えば車いすの方を移乗させる時や、入浴介助の場合など、力が必要な場面が多いですのでやはり筋力はなるべく欲しいですね。
当グループホームは認知症専門ですので認知症の高齢の方特有の症状に対して粘り強く、我慢強く接する、そういった気持ちの面での強さも必要だと思います。また、感染症を持ち込まないように日々の健康にも気をつけることも大事ですね。
◆これからの目標は何ですか
仕事上、長期の休みを取ることは難しいのですが、いつか家族みんなでゆっくり旅行に行きたいですね。また、我が家の育児が一段落したら、福祉介護の資格取得にぜひチャレンジしたいと思っています。
入所者のお年寄りとの会話
食事作りと後片付け