10b.jpg代表取締役 八鍬欣治さん

地元にとどまり新たな事業に挑戦
~地域の雇用を守りながらワサビ栽培も展開~

◆どんな仕事をしていますか

 当社は、国土交通省や山形県、大蔵村といった自治体から受注した公共工事を中心に行っています。具体的な内容としては道路や河川の改良や急傾斜地の地滑り対策などの土木工事ですね。
 この会社は、私の祖父が大正15年に起こしたもので、私は3代目の社長になります。当社の創業当時は主に電力会社の仕事を請け負っておりました。大蔵村に水力発電所があるのですが、その建設に伴った様々な土木工事を請け負ったんですね。その後、時代が進むにつれて、電力関係の自動化が進み、仕事が減ってきたことに伴い、昭和30年代から現在のように公共工事へと移っていきました。私は、父親から平成15年に社長職を引き継いでから、もう13年になります。

◆最上地域で仕事されてご感想は

 当社は大蔵村で事業を行っているわけですが、もし今まで以上に会社を拡大し、業績を伸ばしていこうと考えるとするなら、人材を求めて村外に出るしかありません。そうせずに地元に残り、ここで事業を継続しているのは、地元のために仕事をしたいとか、地域の発展に寄与したいという思いがあるからです。
 しかし実際には人口が少ない大蔵村ですから、獲得できる人材の数も少なく妥協する必要があります。当社と同様に村内に残る企業の多くは高齢化が進んでいまして、社員の平均年齢が上がっています。その点、当社は平均年齢が40代と比較的若いのも、地元の若者が少しずつでも入社してくれるおかげだと思っています。
 今は全国各地の自治体が人口減少対策や若者にとどまってもらう政策を行っていますが、大蔵村の取り組みに、当社もなるべくお手伝いをしていきたいですね。

◆若者の印象をお聞かせください

 悩みをひとりで抱えてしまって同僚や仲間に相談しなかったり、コミュニケーションそのものができない方が多いように思います。私としてはなるべく腹を割って話したいと思い、 よく懇親会を開いていますが、なかなか難しいですね。
 私が若い頃には、会社の寮に入り、毎日のように仲間と話しましたし、上司や先輩と酒を飲む機会もあって、何でも相談できました。現代はそういった付き合いが少なく、会社は会社、自分は自分とはっきり分けて考える方が多いですね。仕事とプライベートを分けて考えることは良いことだと思いますが、建設業は、班単位で作業にあたり、時には危険を避けるために大きな声を出すこともあるような、気心の知れた仲間と一緒にする仕事です。悩みを一人で抱え込むような時代風潮は、土建業にとってはあまりありがたいとは思えませんね。

◆ワサビ栽培も手掛けていますね

 10年ほど前になりますが、作業所の近くにとても綺麗な水源がありました。その当時は徐々に公共工事が減少している時代で、当社も違う産業に関心を持っていた時に、この綺麗な水を使って何かができないかと考えました。そんな時に、ワサビ栽培の提案を受けまして、ぜひ挑戦してみようということになりました。その後、指導を受けながら試験栽培を行い、平成19年に出荷が開始できるようになったのです。この綺麗な雪解け水を使った品質の高い「大蔵わさび 雪葵(ゆきあおい)」は、現在2万本ほどを栽培しています。
 最上地域は雪深く、毎年冬は大変ですが、雪を冷熱や観光資源としているだけでなく、とても綺麗な水資源として見ることも有用な方法だと思いますね。

 ◆これからの課題は

 栽培規模の拡大は、水の量の限度があるため難しいのですが、この質の高いワサビを今後どのように売っていったらいいか、さらに工夫を加えていきたいと思っています。自治体は農産物の6次化に挑戦していますが、何を作るかと同時に、誰に対してどのように売るかを真剣に考え、同時に実行していかないと成功は難しいように思います。


10c.jpg平成10年度入社 千葉明美さん

◆入社の経緯を教えてください

 高校を卒業した後、すぐにこちらの会社に入りました。私は、舟形町の出身ですが、母親が大蔵村の生まれで、小さい頃から母の実家によく遊びに来ていたのです。そういったこともあって大蔵村が、小さい頃から大好きでしたので、就職もためらいませんでしたね。
 それに、若い頃から土木作業に使う重機やダンプを見るたびに、男らしくてカッコいいと憧れていまして実際に土木建設関係に就職したいと思っていたんですね。そこで、大蔵村にある建設業者という自分の希望がこちらの会社に入ることで叶いましたので、現在はとても充実しています。

◆この業種で女性は珍しいのでは

 はい。事務職の方が女性なのは珍しくはありませんが、私のように現場に出て重機を扱う方ではまだまだ少ないと思います。入社した当時も最上郡内で初の人材だとかなり言われました(笑)。新採用で入社した時にも、社長は私が事務職を希望していると勘違いしていたようで、現場に出たいと伝えた時は驚かれましたね(笑)。入社後、重機の運転ライセンスを取得させていただき、各種建設機械を扱えるようになりました。

◆実際に仕事にあたってご感想は

 もう17年が経ちましたが、今でもとても楽しいです。もちろん機械力だけでなく体を使うことも多いですので、体力的にきついところもありますし、入社当時は、例えば手洗いや着替え場所が作業場に設置されていなかったりなど、現場の環境が女性を想定していなかったので苦労もありました。でも、そういった労働環境の改善は、最近かなり進んできたという印象があります。
 また、私がこの職業を選んだ動機は、単純にカッコ良さや重機に乗ってみたいという興味が原点でしたが今では、仕事の結果出来上がった構造物を見ると嬉しさを感じますし、建設工事を通して地域の安全や便利さなど、みんなの役に立っているんだという満足感を感じるようになりました。
 会社の方々も、女性でありながら現場作業に出たいという私のわがままを聞いて下さって、様々なライセンス取得や、休憩設備のことまで考えてくれました。
 これからも仕事を頑張ってその恩に報いたいですし、何よりも、好きな場所で好きな事を仕事にできる幸せを感じながら、これからも続けていきたいと思っています。

◆慣例を破って業界に飛び込むのは勇気のいることです

 私の場合は、ただ自分が好きなことをしてみたかっただけで他に何も考えませんでしたので、男性社会に飛び込む怖さや悲壮感は無かったですし、自分で自分を勇気づけるようなこともしませんでしたね。
むしろ、自分の興味や未来への期待感を素直に受け止めて、余計な事を考えなかったことが良かったのかもしれません。
 いろいろ心構えを行うことも大切だと思いますが、単純に自分の興味を大事にしながら、何も考えずに一歩を踏み出すのが、自分の夢を実現する最短距離のような気がします。

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型枠外し作業

10e.jpg重機を操作して掘削作業