54b.jpg代表取締役 荒木正人さん

最上地域が生み出すものを産業に
~地元産品キノコの付加価値を高めて通年商品に~

●どのような会社でしょうか

 当社は、舞茸、やまぶしたけ、しいたけを生産販売するとともに、これらの乾物を使ったギフトや加工品の製造販売を行っています。1976年に創業したのですが、その頃から、鮭川村にはキノコ栽培に力を入れている方がいました。そうした先輩に習い、エノキダケの栽培から始め、途中からより単価が高かった舞茸の栽培にシフトしていきました。
 生のキノコの価格は、秋、冬と春先で差がかなりあり、市場に大きく左右されます。そこで、付加価値をつけて価格を安定させることをめざし、1985年頃に加工品の製造を始めました。その後、1990年に会社として法人化しました。

●キノコはヘルシーで人気です

 はい。やはり消費が増えるのは鍋物が多くなる秋、冬ですが、体に良い食品ということで通年食べていただけるようになったと思います。また、昔と違って、スーパーで一年中扱っていただくことで季節商品というイメージが薄れ、手に取ってもらいやすくなりました。

●最上地域で仕事をしてご感想は

 企業は、売上と原価の差額から利益が出ますので、その差引がプラスにならなければ富にはなりません。
当社は、地元の鮭川村で産出するキノコから商品を生み出し、出荷しています。
 一般的に製造業や流通業は、他所から仕入れた材料を加工したり販売する業態です。自社の商品の元になるものを他所から買わざるを得ない業態では、時代が変化していくなかで利益を出し続けることは、とても大変で難しいことのように思えます。
 今後も地域が成り立っていくためには、地元企業がきちんと利益をあげ、雇用を守りながら、元気に事業を続けていかなくてはいけません。他所からの仕入れなど地域外の影響を受けやすい業種に過度に依存することなく、徐々に最上地域から富を生み出していけるように産業の構造を変化させていかなければなりません。
40年以上、最上地域で商売をしてきて、そのように思います。

●変化するためには何が必要ですか

 高等教育を受けた人材が地元のために新しいものを生み出したり、発展のために尽力していくことで、地域にプラスの循環を生み出していきます。優秀な人材を育てる環境は、残念ながら最上地域は不足していると感じています。
 高等教育の場には、例え狭い分野の学問であっても、教授や専門家だけでなく学びを志す学生も集まります。そのような場をまず設け、それに呼応する知的産業など、様々な事例を蓄積し重ねていくことで地域全体が底上げされてくるのだろうと思います。
 私自身、営業で様々な地域に行き栽培や商品作りなどのノウハウがまだまだ足りないと感じた経験があります。キノコに限らず、産業が競争力を持つためには、専門知識や技術力がとても大事だと実感したのです。IT社会の現代ですから、様々な通信網を利用することで最上地域に高等教育の場を作れるのではないでしょうか。ここで様々な知識やスキルを身に着けた人材が地元で仕事をして生活できるように、地元での教育環境を大きく変えていくことも考えられます。

●他地域で学びUターンしてくることも

 もちろんそうです。一度、大学進学や就職で都会に出て、他の会社でしっかりと勉強するのは良い経験になると思いますよ。仕事のノウハウを取得し社会経験を積めるのは、とてもありがたいことです。そのような経験や力を身に付けた人にもっともっと地元に戻ってもらうには、地域や企業もさらなる工夫が必要です。
 私も企業経営者として、今後力になってくれる仲間とのネットワークを作っていきたいと思っています。