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代表取締役 五十嵐忠一さん

信じて起業した養鶏を最上のブランドに
~ブロイラーでHACCP推進農場に指定~

●どのような事業を行っていますか

 当社は、鶏(ブロイラー)を飼育して、「最上どり」のブランド名で出荷しております。その他に、鶏肉の加工品製造や鶏ふんを有効利用した肥料も生産しています。ブロイラーは現在、年間90万羽を出荷していますが、2018年度中に150万羽に規模を拡大し、併せて食品加工場も建設する予定です。

●凄い数のニワトリですね

 はい。これだけの数のブロイラーを少人数の社員が生産管理するために、工程をチェックリスト化しています。また、全員で衛生対策を遵守するよう欠かさずミーティングも行っています。そういった工夫が活き、2018年7月頃にHACCP推進ブロイラー農場の認定を取得する予定です。
 さらに、JGAPという食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証の取得を目指して、生産体制の整備を進めています。

●創業の経緯は

 私は、鮭川村の出身で実家は米農家でした。高校を卒業した後は家族とともに農業に従事していました。
しかし、冬は出稼ぎにいかざるを得ない生活を何とかしたいと考えていました。養鶏にはもともと興味があり、研修にも参加していましたので、養鶏業を起業しました。24歳の時に、家族に協力してもらい金融機関から5千万円の融資を受け、初めてとなる観音寺ファームを建設し事業を開始しました。
 当時は、周囲からは絶対に失敗すると言われていました。その悔しさを励みにして、とにかくがむしゃらに頑張りました。また、子どもが何かを実現させようと必死に取り組んでいた時、真剣に向き合い誰よりも応援してくれるのが親だと実感させられました。当時の両親の理解と協力には頭が下がりました。今でも一番尊敬できる存在です。信頼してくれただけに失敗して事業を終わらせるわけにはいかないと必死でしたね。

●その頑張りが実りましたね

 2006年に法人化し、鶴ヶ平ファーム、三の平ファームと広げ、ここ数年、山形県や鮭川村から支援してもらえるようになりました。最近では、当社製品を鮭川村のふるさと納税の返礼品にしてもらったこともあり、少しずつ認知されるようになってきたと思います。置賜の牛、庄内の豚に加え、最上の鶏をブランド化したいと頑張っているところです。

●鶏ふんも有効利用していますね

 当社では、飼料用米を餌にしてブロイラーを飼育し、鶏舎で出た鶏ふんを燃やして、鶏舎や事務所の暖房に活用しています。この温水ボイラーを導入したことで、従来使っていた重油の量を7割も削減できました。さらに、焼却して残った灰は、リン酸カリ肥料として飼料用米生産農家へ販売するという取組みも行っています。

●従業員にはどのような方を希望しますか

 社員が会社の運営に主体的に関わり、参画してもらえる職場にしようと心掛けてきました。会社の方向を左右するような決断や、プレッシャーがかかりすぎることについては、社長の私が指揮を執り進めていきますが、日々の業務について社員の考えや判断に任せることがほとんどです。仕事を任されることで責任感が芽生え、社員の自信につながっていくと思っています。
 日々の業務だけでなく、事業そのものを引き継げる良い人材がいれば血族にこだわらずに承継することもあると考えています。現在、もし私が何らかの理由で会社から抜けたとしても問題がないくらい、社員に任せられると考えていますし、実際、とても良い雰囲気で運営が行えています。事業の後継者については心配していません。


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2014年度入社 眞見和貴さん

●どんな仕事を担当していますか

 鶏(ブロイラー)の飼育から出荷までを行っています。仕事の内容は、ヒナに餌を与えることや、成長し、機械による自動給餌に切り替わった鶏には、住みやすいように鶏舎の環境を整えることをしています。例えば、鶏が弱るのを防ぐために、鶏ふんが湿っていたら灰を撒いたりもみ殻を混ぜて乾かしたりすることで、鶏舎内の床の湿気を取り除きます。
 また、出荷が終わった後には、重機を使って鶏ふんを出す作業やその後の洗浄作業も行います。当社では、鶏ふんをボイラーで燃やして利用していますのでこれも大事な仕事です。

 養鶏は、鶏舎の温度管理がとても難しく、現在、調整の判断は社長が行っています。
ファームの担当者としては、気温が上がる夏場は特に神経質になりますし、台風の時などは逆に温度が急激に上がったりもしますので、この仕事を始めてから天候や気象状況に敏感になりました。

●入社したきっかけは

 私は、高校を卒業してから一度地元を離れていましたが、戻ることを決めた頃から仕事を探していました。
そんな時に、父が当社の社長と同級生だったという縁があり、家族から薦められたのが、この会社に入ったきっかけです。私は、農業や畜産についての知識も経験もないまま、「きっとできるだろう」という軽い気持ちで、この仕事に飛び込みました。すべてが初めての経験でした。最初は鶏の体調が良いのか悪いのかすらわからず、毎日ドキドキでした(笑)。
 幸いなことに同僚に恵まれ、また、会社の方針はみんなで共有し、みんなで改善していこうという前向きな雰囲気でしたので、緊張も和らぎ、一年も経たないうちに仕事の流れを覚えることができました。

●仕事をしての感想はいかがですか

 生きもの相手の仕事で、とても大変です。でも、入社当時から、対処方法などのマニュアル作りに参加し、こうした活動を通して、現在は、みんなとコミュニケーションをとり、話し合いでうまく仕事を回せるようになっています。その輪に自分も参加していることで、とてもやりがいを感じています。

●これからの目標は

 当社は、これからさらに規模を拡大しより多くのブロイラーを飼育していきます。私も、大きな仕事を担当できるように頑張りたいですね。

【先輩からひと言】
「仕事探しは、自分が興味を持っていることや出来ることは何かを自分自身に問うことでもあります。」

【おしごとPoint!】
食肉や牛乳、卵を生産するために牛・豚・鶏を飼育している畜産業は、山形県の食の多彩さを支えています。
鶏は、飼料用の米を餌とする飼育方法が広がってきています。