44b.jpg常務取締役 沼澤紘一さん

地元への愛着を大事にしたい
~時代にあわせながら変わり続ける努力を~

◆会社について教えてください

 ご葬儀に関して、ご家族を亡くされた方のお手伝いをさせていただく葬祭業を手がけております。当社は、葬儀だけではなく盛り籠や生花、霊柩車や葬儀会場、お引き物からお料理まで、葬祭に関係するもの全てをお引き受けしていますし、さらに、ご葬儀後の法要などの仏事から仏壇仏具などの物品に関しても取り扱っております。
 当社の創業は明治28年で、当時は八百屋業から始まりました。それから仏壇仏具を取り扱いはじめ、時代ごとに業態を少しずつ変えながら現在に至っています。葬祭業としての歴史は60年になります。

◆現在の役職に就かれた経緯は

 私は創業家に生まれ、長男だったこともあり、小さな頃からいずれはこの仕事を引き継ぐんだと聞かされながら育ちました。そのため、仕事の選択について悩んだことはありませんね。自営業を継ぐというのは、親から受けた教育によるところが大きいと思います。
 新庄には高校卒業までおりましてそれから東京にある私立の大学に進学させていただきました。その時は私の教育をここまでやってもらっていると両親に感謝もしましたし、なんとしても将来は新庄に戻って企業を引き継がないといけないと改めて思いましたね。ただ、卒業後は別の場所での修行も必要だと考えまして、仙台の葬祭業者に入社し、一社員として鍛えていただきました。学生を終えてすぐ地元に戻るのも良いですが、社会経験が無いままに企業経営に携わるのは難しいですし、他所のやり方を見て、自分の経験の幅を広げてからの方が良いのかなと思います。

◆最上と他地域に違いは感じますか

 若者が定着しづらい環境であると感じることはあります。教育環境や若者が魅力を感じる商業施設の少なさ、そして何より雇用の場が少ないことでしょうね。若い方それぞれが持っているスキルや経験を活かしきる職場が少ないんだと思います。
 私自身も経験があるんですが、仙台から帰ってすぐの頃は、自分自身が周囲から浮いていたように思います。当時の私は、地元に馴染むのが怖いような気がしたんですね。それは、自分が身に付けてきたものが、地元の色に染まりきって、見えなくなってしまうんじゃないかと思えたんです。そんな気持ちがどこかにありました。今ではすっかり馴染んでいるんですけれども(笑)。
 もう少し新庄という地域に、新庄人自身が成長できる場や、外から見た時の魅力があれば、戻って来る若者はきっとたくさんいるんだろうと思います。そんな、戻って来ようとする若い方には、新庄には無い個性を持ったままそれを大事にして、地元に持ち込んでほしいと思います。地元に帰った時にもし私が感じたような違和感を持ったのであれば、それは地元で得られない何かを身につけてきたという証ですから、それに対して怖がったりしないで欲しいですし、また、今地元で生きる我々自身には、そういった違ったものを持ち込んでくれる若い人にもっと寛容さを持って迎えてあげようと言いたいですね。新庄が、異なるものを進んで受け入れる地域になれたら、もっと活性化できると思います。

◆これから社会へ出る若者へ一言お願いします

 高い理想や夢を持つのは大事ですし、それは若いからこそ出来るんだと思います。大事なのは、その理想に近づいていく努力と、その努力を支えてくれる環境を考えることなんだと思うんです。
 最上で生まれ育った方には、夢を実現していくための努力の場として、生まれ故郷である最上は良い環境ではないですかと伝えたいですし、もう一度見つめ直してもらえたらと思います。私たちもそういった若者をもっともっと受け入れるために変化しなければいけないですね。
 地域として存続し大事なものを失わないように、変わらないために変わり続ける努力というのが、最上に住んでいる我々に、今求められているのかなとも思いますね。


44c.jpg葬祭ディレクター 井上直人さん

◆入社の経緯を教えてください

 私は新庄の生まれで、今年で30歳になります。沼澤常務とは幼馴染みで家も近所ですから、こちらの会社は昔から知っていました。私の祖父が亡くなった時に葬儀をこちらにお願いしたのですが、その時の社員の方の対応に大変感銘を受け、それが記憶に残っていましたね。
 私は以前、山形で幼稚園教諭をしておりまして、故郷の新庄に戻った際に、職種を変えるかたちでこちらに入社しましたが、残っていた会社の印象が、入社希望の決め手になったのかもしれません。

◆職業を変えた時のご苦労は

 違和感は感じませんでしたね。実は若い頃に、当社でアルバイトをした経験もありましたし、仕事の内容も分かっていましたから。ただ、前職は小さい子どもに毎日接する仕事でしたし、現在はお亡くなりになった方や、それに伴って悲しんでおられるご遺族の方がお相手ですのでが、明るさと悲しさという、正反対の感情に向き合う職に変えたことになります。ですがどちらも、生きている人の誰もが、人生で経験するステージに立ち会うという意味では同じだと思います。
 また、この仕事について特に感じたのはお客様からいただく「ありがとう」という言葉に、重みを感じたことで、今ではそれがやりがいになっています。お客様からすれば、大事な家族を失って悲しみの只中にあって、それでも我々のような業者に感謝を示していただいているわけですよね。普段からよく使う何気ない一言でも、そういった悲しい思いにあるお客様から頂いた言葉となると、やはり重みが違いますし、そんな時はこの仕事をして良かったと思える瞬間でもあります。
 こういった感覚は、それまでは感じたことはありませんでしたし、入社してすぐよりも、ひとつの葬儀の全体を任されるようになってから特に感じるようになりました。

◆普段のスケジュールは

 仕事の内容としては、葬儀の打ち合わせ葬儀当日までの全般を取り仕切る葬祭ディレクターという役割です。その仕事柄、お客様からのご依頼が来て打ち合わせが何時になるのか全く分からないという職種ですのでスケジュールはその日によって本当にまちまちですね。
 今日は、午前中に備品の整理作業備品を行い、昼休みをはさんで午後から、依頼を受けたお客様のお宅に打ち合わせに行ってまいります。急な予定が入らない限りは、9時から午後6時までというのが通常の勤務時間になります。

◆後輩へアドバイスをお願いします

 若いうちはやりたいことも多いですし、夢もたくさんあるでしょうけど、自分の希望通りの進路に進める人というのは少数派だと思います。いろいろな事情によって最初に考えていた道とは異なる方向に進む方がむしろ多いと思いますし、中には就いた仕事が向かないと感じる人もいるかもしれませんよね。でも、仕事に限らず生きていれば人生いろいろなことがあって避けられないですから、その度に諦めたり逃げたりしていてもきっと道は開けないだろう思うんです。昔の人は三年頑張れと言いましたが、それは人それぞれなのだろうと思います。何週間の人もいるし、何年、何十年と言う人もいるでしょうけれど、自分で心底納得できるまで頑張ってほしいと思います。

◆井上さんは納得できるところまで来ましたか

 僕はまだまだですね。今はまだ頑張っている途中です(笑)。まだ納得も満足もしていませんので、ここで終えるわけにはいきませんよ。

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依頼先での打合せと企画提案