20b.jpg代表取締役 庄司和敏さん

地元を守る企業であり続けたい
~地域の特性を見据えてできることを着実に~

◆創業の経緯を教えてください

 私は昭和23年にこの地元で生まれました。大人になってから東京で8年ほど材木屋に籍を置いて仕事をしまして、それを終えた昭和51年に地元に帰ってきました。その後、ここは木が多いということで製材業を始めたのです。戻ってもう39年になりますね。

◆地域でどんな企業でありたいとお考えですか

 風景を見ていただければわかるように、この地域はたくさんの木が生えています。それだけたくさん丸太があるということですから、それを使って会社を運営しているだけですよ。地域でどんな企業でありたいかというよりも、まずはここで出来る事は何か、それから始めようという視点ですよね。
 製材業はとても厳しい業界ですから、常に生産の効率化を図るため、毎年多額の設備投資を行っています。
それには、私の考えとして、何かと制約の多い補助金にできるだけ頼らず、行政からの規制や押さえつけに縛られずに、企業自身の目線で設備投資を考え実行するほうが良いと考えています。その方が最適な投資ができますから。 一つ一つの規制に気を取られていては、経営に一番大事な「スピード感」が鈍ってしまうと思います。もちろん経営には、効率やお客様への納期、製品の品質が大事ですし、ある意味、それらを守っていれば必ず商売はできます。
 しかし、変化の激しい現代では、迅速に意思決定を下していかないと、変化に対応しきれないですよ。例えば、当社は日本で初めてとなるロボットによる製材加工である無人の設備を導入しました。絶えず他者とのコスト競争を強いられている以上、そういったトップが下す決定のスピード感を鈍らせるわけにはいかないですね。

◆どんな方を採用していますか

 会社に応募して来られる中で、当社はなるべく地元の長男の方を採用しています。長男はやはり跡継ぎですから、後を継ぐ若い方がこの地域で就職できなければ他所に出て行かざるを得なくなり、その家は続かなくなりますよね。家がそうやって減っていけば、地域はいずれはなくなってしまいます。
 私としてはなるべく跡継ぎである長男の方に仕事を提供し、ひいては地域が存続できるようにと考えています。

◆最上と他の地域との違いは

 あまり感じませんね。雪が多いことだけかな。5ヶ月間は雪と関わらないといけないですし、その意味では大きなハンディキャップです。でもこれは仕方のないことで、反面、この自然環境がたくさんの木々を育んでくれるわけですから。

◆休日も出てこられる仕事人間だと伺いました

 毎朝4時30分に金山、釜淵、本社工場のすべて見回るのが私の仕事の始まりです。この業界の生産工場は、かつて県内に45もの工場がありました。でも今は当社しかないんです。それだけ厳しい業界なんですね。
 私は確かに仕事人間だけど、好きでやっていると言うよりは仕事し続けないと会社が潰れますから、そういう危機感からです。でもちゃんと休みも取りますよ。
 また当社は、8時から仕事を開始し、17時で必ず終えることにしています。それは、兼業農家の従業員が多いからなんです。そうすれば会社の仕事を終えた後に農作業もできますからね。

◆今後の会社の方向は

 もちろんこれからも製材を事業の柱として据えていきます。今現在、当社では3機のバイオマスボイラーを稼働させていますが、この豊富な森林資源を活用した地域熱供給をここで展開したいなと思っています。これは私の夢なんです。 ヨーロッパはその点で先駆的で、エネルギー源の地政学上の不利を自然再生エネルギーでカバーしようとしていますよね。それを見習い、この年々高齢化が進んでいる東北の田舎でもこういうことができるんだという、実例を作りあげたいですね。


20c.jpg製材加工オペレーター 井上裕也さん

◆とてもしっかりした方に見えます

 私はもともと祖父譲りの頑固な性格で、就職に関してもあまり知り合いのいないところにひとりで飛び込みたいと思っていました。知り合いが多かったりすると自分自身に対しても甘えが出ると思っていましたので。
この会社には1歳上の先輩が1人いるんですが、他の方は知らない方々ばかりで、自分のそんな仕事への考え方にとても合っている職場だと感じています。私の祖父は仕事に対してとても厳しい人で、小さい頃からその祖父を見て育ちましたので、私も仕事に対する甘えを持たないように肝に銘じていますし、やはり誰にも負けたくないですね。

◆入社までのいきさつは

 私が通っていた高校の先生が社長と知り合いで、先生からこの会社を紹介していただいたのがきっかけで入社しました。入った当初は出来上がった製品の量を判断する仕分けの仕事から始めました。色々大変でしたが、先輩方の仕事の内容を見て覚えて、自分でやってみることから始めました。自分の思い通りになかなか進まないという辛い時期も、入ってから1年間ぐらいがあったんですが、その時社長からとにかく色々なやり方を試して自分の方法を見つけろとアドバイスをもらえまして、それが辛い時期を脱したきっかけになりました。
 今受け持っている仕事は、製材オペレーターです。製材は重機で搬入されてくる丸太を大きな機械で加工して進んでいくんですが、その加工機械を操作する仕事です。このオペレーターは、去年の2月から担当しています。
 
◆仕事のご感想は

 もちろん会社から受ける期待と、さらに責任感というプレッシャーはありますが、自分にはとても合っている仕事かなと思います。操作をミスしたら製品になりませんから、その原材料の分だけ会社に損失を与えてしまうことになります。そんな失敗をしないようにというプレッシャーを感じながらの仕事ですが、社長からは仕事はやって覚えるしかないとも言われていますので、これが励みになっていますね。

◆社会人になって変わりましたか

 言い方は変ですが、怠けられなくなりました(笑)。社会人、特に勤めているとなると、その日のことだけではなくて明日や来週のことといった先々を考えながら段取りしていくことが求められます。ですので、体調も考えて早めに床に就くとか常に先を考えなければいけないことが多くて、学生の気楽さというのはなくなりました。

◆これから就職される若い方へ一言お願いします

 まずは責任感をきちんと持って仕事に取り組むことが大事です。あとは、上司や先輩から指示される前に自分で仕事を見つけることです。また、できる仕事は最善を尽くしても、できない事はやはりできないので、それについての要らないプライドは捨てろと後輩にも時々言うんです。できないところは先輩に素直に教えを乞い、その上で自分のものにしていけばいいと思いますね。

◆今後の目標を教えてください

 若い人にぜひ飛び込んで挑戦してもらえたら自分も嬉しいです。また、私も先輩方からいろいろ学びたいと思っているんですが、なかなか話しかけられなかったり、何となく壁を感じているんですね。できればそんな壁を取り払って、もっとコミュニケーションをとれたらなと思っています。

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製材加工機械のコンソール操作作業