16b.jpg営業主任 荒木尚史さん    代表取締役 荒木大安さん

土地柄を活かして特産品に
~従来の慣習を超えて起業し産業化に成功~

◆どのようなものを作っていますか

【主任】 当社は、エノキダケの生産を主に行っている会社です。売り上げの9割ほどがエノキダケによるもので、さらに、その他としてトビダケとキクラゲを生産していますし、エノキダケを乾燥させた加工品も出荷しています。エノキダケは、周年栽培しておりまして一年中、生産・出荷しております。

◆創業の経緯を教えてください

【代表】 私は、ここ鮭川村の出身で、農家の生まれです。私が若い頃には冬の間に出稼ぎに行くことが普通のことでしたし、私も行っていました。
 そのような中、鮭川村はキノコを中心に農産物が豊かな土地柄ですので、その特長を活かして、出稼ぎに行かなくとも収入が得られるような仕事が作り出せないかと考えるようになりました。そこでエノキダケに注目して栽培する仕事を起業しました。23歳の時でしたので、今年で創業45年になります。起業した当時はとても小さな事業でしたが、栽培を勉強しようと当時の先進地の長野県に行ってみました。

◆ご感想はどうでしたか

【代表】  先進地だけあってカルチャーショックを受けましたね。当時の私としては、主な仕事はあくまで米であって、キノコは副業程度と考えていました。しかし長野では、キノコ生産が主たる事業として十分に成り立つということを目の当たりにしたのです。そのことがとても大きくありました。鮭川に戻ってからも長野の業者とやりとりを続けながら、徐々に周年栽培に切り替えていき、事業に本腰を入れるようになりました
 長野のキノコ農家とは、実際に見に行く前から文通をしていました。このような交流の下地があったからこそ、栽培や経営のノウハウなど、門外不出のところまで全てを学べたと思います。この交流は現在も続いています。

◆この仕事を選んだきっかけは

【主任】  私は代表の息子にあたりまして、同じく鮭川の出身です。高校を卒業してから留学をしまして、戻ってから静岡にある食品商社に入り、そこでの業務として東京で5年間仕事をしました。その後に地元に戻り、当社での仕事を始めてから2年半になります。現在は、主に生産を担当しています。

◆最上でお仕事をしてのご感想は

【代表】 確かにここは冬の期間が長くて雪深いところですが、生業として仕事をやっていけるのであれば、雪深い環境はあまり関係ないと思います。それよりも、政策的な影響の方が大きいと思いますが、キノコ業界は農政で守られていない分野です。
 でも、今になって思えば、それが良かったのかもしれないと思います。もとから保護もされておらず、市場の競争が激しい分野に、初めから挑戦していきましたので、当初から競争力を第一に考えざるを得なかったことが、厳しい市場環境にも耐えていける会社になれた一因かと考えています。

◆どんな若者に来て欲しいですか

【代表】 若者には是非、弊社に来て仕事の楽しさや厳しさを学び、共に働いてほしいと考えます。一人ひとり個性があり、向き不向きもあるとは思いますが、どんな仕事でも素直に真摯に取り組めば働くことの楽しさや素晴らしさが見えてくると思います。
 当社にも様々な個性を持った方が働いております。中には、コミュニケーションをとることが苦手な人、ハンディキャップのある人も働いておりますが、素直で一生懸命に取組む方が、やはり一番伸びますね。

【主任】 やはり、ひとつのことに集中してこそ仕事だと思います。周りをキョロキョロと見ていても仕事になりませんから、つきつめて集中できる力がとても重要ですね。

◆今後の地域との関わりは

【主任】 まずは会社として利益を出して、税金をきちんと納めるということで地域に貢献することが大前提です。それに加えて、当社も海外からの研修生を受け入れていますので、そういった国際貢献と言う意味でもお役に立てると思っています。


16c.jpg平成24年度入社 小野成実さん

◆どんな作業を担当していますか

 接種と言いまして、培養ビンの中にある菌床にキノコの種菌を植え付ける、畑作に例えれば種蒔きのような作業ですね、これを担当しています。具体的には、接種はすべて専用の機械で行うのですが、その操作とそれに伴う物品の運搬や準備作業もあります。

◆ものすごい数のビンがありました

 そうですね(笑)。接種は1日当たり10,000本を超えるくらいの数を行いますから、工場全体でのビンはかなりの数になると思いますよ。接種工程そのものは機械で行うのですが、ケースのセットや積み降ろしなどの手作業の部分もありますので、体力と筋力がないと大変ですね。
 私は北村山の高校を卒業した後、こちらに入社しまして、その時以来接種を担当して、4年目になります。

◆入社して大変だった事は

 ここでは同年代の方や年配の方がたくさん働いておりますが、みなさん優しくて人間関係で戸惑ったということはありません。ただ、菌床のケースを載せた台車を押したり引いたりする作業は、筋力がつくまでとても大変でしたね。台車は多分160㎏ぐらいありま、万が一でも倒したりしては大変ですので(笑)。今ではすっかり慣れてミスすることはありません。

◆学生時代と社会人での一番の違いはなんでしょう

 当たり前のことですが責任感が違います。アルバイトも良いのですが、社員となると仕事に伴う責任が大きいですし、それに向かって心構えも必要なのかなと思います。ただ、私は性格的にあまりタフではなくて、失敗した時などすぐにヘコんでしまうんです。でもそんな時には上司や仕事の仲間が励まして下さいますので、それをきっかけに自分の気持ちをまた前向きに切り替えています。
 会社という組織に加わって働くという事は、もちろん責任もありますが、みんなでカバーし合ったり励ましあいながらひとつのことに向かっていけるという、良いことの方が多いと思っています。

◆後輩世代へのアドバイスをお願いします

 まだまだ私は若くてあまり偉そうな事は言えませんが(笑)、まずは目上の人に対しての挨拶や礼儀がいちばん大切だと思います。学生のうちに、そこだけはしっかり身に付けておいて、具体的なスキルについてはそこから始めたらいいと思いますね。

◆これからやりたいことは

 雑菌の管理を完璧にすることが目標です。キノコは菌ですので、余計な菌が紛れ込まないように管理することはとても大切なんですね。
 また、まもなく来る海外研修生の教育係を受け持つように言われています。インドネシアから3名の方が来るのですが、仕事だけでなく生活全般の相談にのることがこれからの仕事になりますので、どのように対応すれば良いか、今からどきどきしています。来られる方はいずれも同年代の女性と聞いていますので、まずは仲良しになって、それから仕事の楽しさを感じてもらえるよう、うまく対応したいなと思っています。

16d.jpg
生育状況の見回り

16e.jpg培養ビンからの製品取り出し