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工場長 荒川利也さん

若者にモノづくりの喜びを教えたい
~製造業で地元雇用を維持し地域の経済に寄与~

◆どんなものを作っていますか

 光学機器や精密機器に使われる部品です。当社は、素材としてアルミ合金を得意としておりまして、穴開けやフライス加工を行うマシニングセンターやNC旋盤などを使って、精密部品に加工しています。
 当工場が始まった当時は旋盤加工が主でしたが、取引先の要望や受注部品の多様化に従って、徐々に様々な加工機械を導入し現在のようになりました。本社は埼玉県にあり、当工場はその製造拠点という位置づけです。社長は戸沢村の出身で、製造拠点を設けようした時に、生まれ故郷であるこの村を選択したのですね。昭和48年に操業を開始しました。私は高校卒業後に、仕事を手伝ったことがきっかけで入社しました。

◆地域の中で運営しているご感想は

 私自身も戸沢村の出身ですが、近い分、通勤が楽というメリットの他に、地元で仕事をする際には独特の難しさも確かにあります。なるべく地元の若者を採用したいという当社の希望もあるのですが、地域内の方は互いに良く知っていたり身内感覚もありますので、雇用や待遇について、経営としてドライに割り切れない部分もあります。
 金属加工作業では潤滑油が不可欠なのですが、中にはその匂いにどうしても慣れないとか、体質的にあわないといった理由で続けられず辞めた方もいらっしゃいます。仕方のない理由での退社だとしても、地域内で見知った方である分、その後も気を遣ったりしますね。

◆製造業を取り巻く情勢は

 今はモノがあふれている時代ですし、例えば人と会って話をすることもITで簡単にできる時代です。
何をするにも楽さやスピードを求めてしまいがちですが、この風潮が全て良いことなのかと考えると、私は少し懐疑的です。一番大切な心や感情といったものを、どこかで置き去りにしてはいないのかなと思います。製造業も同じです。出来上がった製品に対して取引先やお客様に感動していただけるかは、それを造っている我々自身が、自分で造ったモノに感動できるかにかかっています。ですから、そういった心と感情を抜きにしたモノづくりなどありえないのだと思います。
 あくまで人間がモノを造り、それを使うのも人間なのですから、そういったアナログの部分も大切にしなければいけないのではないかと思いますね。

◆製造業は自動化が進んでいます

 製造機械が進歩していなかった昔は、作る職人の腕が問われました。ところが今は機械がとても良くなりかなりの部分を自動化しています。機械が良くなるにつれて人間的な部分が介在しなくなり、将来、ボタンひとつで製品ができるようになれば、そこに心や感情を求めること自体がなくなるかもしれません。でも、製造機械のボタンを押すことに、どれだけ誇りや感動を持てるのか、そもそもそれを人間の仕事と呼べるのか、これは自動化が進んだ将来、製造業が直面する課題になるのかもしれないですね。

◆現代の若者はモノづくりの喜びや充実感を感じているでしょうか

 今の若い方は、生まれた頃から不景気の時代に育ったためか、どうしても経済的な面を重視しがちです。
純粋にモノを作り上げる喜びを味わう機会が少なくなったような気がしますし、これはとてもかわいそうなことだと思いますね。私は、若い方にモノづくりを実感してもらうために、昔のやり方を原点として伝えていくことが意味のあることではないかと考えています。
 例えば、製品の寸法を測る時に、昔ながらの目盛りのあるノギスの使い方から教えます。目盛りで物の厚さや寸法の誤差を量として見ることで、初めて実感が伴うんですね。このようなアナログの視点を製造業の原点として、そこから自動化を進めていくという姿勢や方向性が大事ではないかと思います。

◆製品を使う消費者と違い、製造業は様々に考えることがあるのですね

 いつの時代もお客様はさらに良いものを求めますが、良いものを作るのはそう簡単ではないですよ(笑)。


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平成23年度入社 越前 唯さん

◆どんな仕事を担当されていますか

 製品の検査を担当しています。内容は、段取検査と呼ばれる加工途中の製品の寸法を図ること、納品検査と呼ばれる製品として仕上がったものを納品する際に要求された設計図通りになっているかどうかの検査の二種ですね。製品の測定には3次元測定器などの機械を主に使いますが、その他にもノギスやマイクロメーターなど、手で測定するものも使います。

◆こちらの会社に入った経緯は

 私は地元の高校を卒業した後に長く接客業をしていました。性格として人と話すことが好きでしたので、接客業を選んだのですが、その後に家に近くて通勤に好都合ということもありこの会社に転職というかたちで入りました。

◆学生から社会人になった時に戸惑いはありましたか

 ありましたね。社会に出ると遅刻できないことや、謝っても許されないこともあるということを実感しました(笑)。もちろん、学生でも遅刻はいけないですし、悪いことは悪いのですが、社会人となって仕事に責任が伴い、また自分の行動によって影響を受ける方がいるわけですから、その分時間の段取りや行動の結果についてもしっかり考えないといけないです。私自身はあまりしっかりした性格ではありませんし、子どもの頃からどこか人に頼って生きてきたような気がします。でも、社会人となれば自分のことは自分で決め、それに責任を求められますので、就職した時ちょっと怖い気持ちもありました。
 世の中に出て程ない頃は、周囲の大人の方たちが訳もなく怖そうに見えたりすることもありました。それは、自分で責任を負わなければならないという、大人になることへの恐れだったのかもしれません。

◆どうやって乗り越えましたか

 私にとって一番大きかったのは、その時に信頼できる上司がいてくれたことです。
普段の仕事で細かいことについても、いろいろと教えていただきましたし、うまくいかなかった時などは一緒に責任を取ってくれたりもしました。そういった方と一緒に仕事をすることによって様々なことを覚え、振り返ってみると、いつの間にか恐れの気持ちが薄まっていました。社会に出てから一年ほどが経った頃のことです。

◆この会社を知ったのは

 ハローワークで紹介を受けたのがきっかけです。私の実家は、この工場にとても近い所にあり、私も小さい頃によくこの道を通っていたのですが、会社があると改めて気づいたのは転職を考えた時期でした。
 その後、面接を受けて採用していただいたのですが、地元出身ということもあり、職場にはよく知っている方も多かったですので、とてもフレンドリーな雰囲気で勤め始めることができました。

◆今後やりたいことは何でしょう

 最上は自然が豊かでのんびり暮らせる良いところです。私は、特に不満もありませんので、これからも住み続けたいと思っています。

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顕微鏡で微細部分の検査

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3次元測定器による測定作業