代表取締役 沼澤貞義さん
惚れた仕事に夢中になれ
~事業を通して文化や伝統に寄与したい~
◆どういった会社でしょうか
当社の基本的な仕事は木造住宅の提供です。木造建築というのは古来、神社や仏閣など様々な建物がありますが、当社もそう言った建物を多く手がけてきました。木に関わる建造物のほとんど全てについて仕事をするという企業ですね。
◆企業理念を教えてください
住宅メーカーとしてはなにより建てたものの品質が重視されます。常にお客様の求める最高の品質の住宅を提供するということを理念として掲げておりますし、それが当社のプライドになっています。ましてや木造というのは日本の文化や伝統を支えてきた大切な建築技術ですから、途絶えさせることなく未来に伝えたいと思っています。伝えるためには技術を磨かなくてはならないし、事業としても継続させなければなりません。そんなプレッシャーも感じますが、何より仕事が楽しいんですよ。第一、私自身が木に関わることや建築というもの自体が根っから大好きですから。
◆創業の経緯をお聞かせください
私は舟形町の出身で、若い頃から大工になりました。奉公から始め、いろいろと経験して、昭和55年に24際で独立しました。今59歳です。
◆最上地域で仕事してのご感想は
何より最上地域は木材に恵まれていますよね。美しい森林王国です。金山杉などはもはやブランドになっていますが、そういった近隣の木材を素材とした建築物を作ることに恵まれた環境であることが、最上の特長であると思います。
でも、雪の問題もありますよね。私たちの仕事はどうしても外になりますので、もっと雇用を拡大しようと考えても降雪期間の仕事をどう確保するかというところが常にネックとなります。そこが降雪地帯で事業を営む者にとっての最大の弱みなんだろうと思います。そのために当社では、仕事のエリアを最上郡内にこだわらず、山形、仙台さらに関東へと対象を広げています。一年を通して安定した受注を図ることで、冬期間の最上郡内の需要低下をカバーしています。そのためには当社の最大の特色となる技術力を益々みがき、同業他社との差別化を図っていかなければなりません。日々仕事を通して、自らを高める努力が必要なんです。
以前に、東京の真ん中の高級住宅街に茶室を建てさせていただいた経験があります。当初の計画では京都の大工さんが請け負う話だったようですが、それが覆り注文をいただけたことは、当社を認めていただいた結果なのだろうとありがたく思っているところです。
◆創業の際にご苦労されたことはありますか
もちろん様々苦労はありました。でもそれは、どんな業種でもあることだと思いますよ。ただ、最上地域に限ったことではありませんが、新しく何かを始めた者に対して「出る杭を打つ」と言うような気質は、確かにあるようにも思います。でも、いまさら気質を非難しても仕方ないですし、変わるものでもありません(笑)。そういうことにあれこれ思い悩んでも仕方がないし、若い人にはむしろはね飛ばしてやるぞという気概を持って欲しいですね。頑張る人への応援の声ぐらいに受け取って、とにかく仕事に夢中になって欲しい。
実績なり腕なりを、周りが認めるくらいになれば、誰も何も言わなくなりますから。
◆最近の印象に残ったお仕事は
私が小学3年生の頃、近所に新しく家が建ったんですが、その家の階段が特徴的で、子どもだった私の眼に強く焼き付いたんですね。それは私自身が大工を志すきっかけとなったお宅なのですが、昨年たまたま、建て替えの依頼を受けまして、感無量でした。施主さんとお話して、新築の家には、私にとっての思い出であるその階段の材料を、壁材のモニュメントとして使わせていただきました。こういうことも、この大工という仕事をしていての幸せな巡り合わせと、感慨深く思っています。
棟梁兼営業 吉田道人さん
◆普段のお仕事はどういったことを
木造家屋を建てる大工です。それに、お客様への説明や内覧会でのご案内など、営業の仕事も分担します。
現場では、材料を刻んで実際に使う部材に加工して組み立てていくわけですが、棟梁独特の仕事として刻む寸法の材料への墨付があります。さらに家を建てていく実際のスケジュールを管理する、建築工事を取り仕切る役目になりますね。
また、施主さんや現場監督、納入業者などのやりとりや打ち合わせも大事な仕事です。昔は棟梁がすべてを見ていましたが、現代は家を建てるにも様々な書類や手続きが必要ですので、その部分は施工管理技師が現場監督という形で担当するように分かれているのが一般的です。
◆気をつけている点は
今は高度情報化社会で、お客様の知識や情報が幅広く深くなって来ていますので、要望にきちんと答えながらも、それ以上の満足を生み出すことがこの仕事の大切さですし、難しいところですね。
また、職人も高齢化が進んでいまして、年輩の大工もたくさん働いていますので、現場での作業に当たっての気遣いも同時に行う必要があります。それに若い職人には技術的な面で指導もしなければいけませんし、あまり仕事の負担がのしかかって辞めたりしないようにするなどの配慮も必要ですね。
◆この仕事を志したきっかけは
もともと余り勉強は好きではありませんで(笑)、体を動かす方が好きでしたので、将来も体を動かす仕事に就きたいなと思っていました。また、私の親戚には建設業界で働く人が多く、小さい頃から「自分がやった仕事が何年も形としての残るやりがいのある仕事だよ。」という話を聞いていたのが大きかったと思います。それで、高等専門学校の木造建築科に進み、2年間勉強してから大工の見習いとして修行してきました。
◆働いてのご感想を聞かせて下さい
社長がとにかく木造建築に熱心で判断や評価がスピーディーな人ですので励みになります。また、木造建築にかける想いが大変強く、私たち棟梁にもきめ細かい技術指導をしてくれます。いつか大工として社長を超えるのが夢ですね。
現代の住宅はだいたい4種類の建て方があり、そのひとつが当社が手掛ける在来軸組み工法ですが、この工法は覚えなければいけない事が多いですし、工期も長くなります。ですが、その分何より面白いですし飽きないですね。大工の腕を存分に振るえる会社だと思いますよ。
◆ご苦労する点は何でしょう
棟梁として材料に墨付(すみつけ)をしますが、それを間違えたら上棟できないわけですから、難しい現場になると夜も眠れなくなることもありますよ。また、部材が大変高額な銘木だったりすると、やっぱり今でもドキドキしますね(笑)。
◆大工を目指す若者にアドバイスを
現在入社2年目の弟子を教育していますが、若手とのコミュニケーション不足にならないよう、気遣っています。私が修行した頃は「先輩の仕事を見て覚える」という時代でしたので、接し方が今とはずいぶん異なる印象がありますね。 大工を目指す若い人には、学生の頃から、同世代だけでなくもっと年配の人とのコミュニケーションや、建築業界特有の価値観に慣れておくことが大事だと言ってあげたいですね。地域の消防団もいいでしょうし、親戚や祖父祖母と普段からよく話してもいいし、上の世代とのコミュニケーション能力を高める機会は身の回りにもあると思いますよ。
◆建築工法はどのようなものですか
手がけている在来軸組工法は、地元で育った材料を、地元の林業業者が切り出して製材し、それを使います。また、家を使い終えて解体する時には、古材を再利用するなど、最初から最後まで山形県で完結することができる唯一の工法です。これからの時代、地産地消やエコロジーの考え方に一番適している工法だと思いますね。
柱の加工作業