05b.jpg代表取締役 長澤光芳さん

地元から価値を産み出し発信する
~食生活の多様化を見据えて計画的に生産~

◆どのような会社でしょうか

 当社はマッシュルーム製造と加工、販売を行っている会社です。私は前職で食品会社に勤めていたのですが、その頃からマッシュルームの価値や可能性を感じていました。その後、会社の方針変更に伴いマッシュルームを扱わなくなったのを機に退職し、自宅でマッシュルームの生産を始めました。それがこの会社の原点になります。徐々に生産する仲間を募り、組合を発足しましたが、メンバーそれぞれの自宅や農場で作る体制でした。その後、マッシュルームの需要が拡大していくのに合わせ、設備を集中して計画的に生産することで安定供給を目指そうと、この会社を設立しました。平成13年のことです。

◆脱サラからの起業は勇気がいることでは

 そうでもありません。私にとっては人生の決断というような悲壮感があったわけでなく、食品会社に勤めていた頃から、マッシュルームに関する生産の状況や消費のスタイルなど世界の情報を集めていましたし、マッシュルームそのものの可能性や価値についても確信がありました。その裏付けとして、これから日本人の食の多様化はさらに進み、西洋料理で頻繁に使われるマッシュルームの需要は高まる、また高齢化により健康志向がさらに進み、栄養成分などマッシュルームの機能性も注目されるという予想がありました。起業は、そういった計算や計画に基づいた行動です。

◆生産地に舟形町を選んだ理由は

 私の故郷でもあるし土地もありましたので、ここを選びました。マッシュルームはハウスなどの設備で生産しますので気候や風土はほとんど関係がなく、極端に低温の地域でなければどこでも作れます。むしろ最上地域を考えた時には、こんなにハンディキャップがある所は他にありません。何よりも冬場の積雪の多さが最大のネックで、産業を興す上でここを選択する積極的な理由は乏しいと思っています。
 ただ、私自身ここに生まれ大人にまで育ててもらったという恩もありますので、最上を拠点としています。
今後も、ハンディキャップをどのように跳ね返して企業をさらに盛り立てていくかが運営課題ですね。

◆今後地域との関わりは

 私は、地域経済の活性化には、中央から予算を獲得してばらまくやり方と、産業を興して地域から価値のあるものを産み出し、それを中央に売ってお金を得るという二つの方法があると思っています。
 また、行政が企業を誘致を進めていますが、これは地域活性化にとってむしろリスクだと考えています。本社が中央にあれば、法人税や付加価値分の税は中央に納めますから、いわばストローで吸い上げられるようなものですし、地域の若者を安い労働力として企業へ提供を図るだけでは、若者の所得向上や地域への定着にはつながりません。もちろん企業誘致は今後も大切なことの一つですが、その発想だけに留まる限りは地域の発展はありえないと思います。
 まして他地域と競う上で誘致を有利に進めるために財政優遇を行うのであれば、その財源は住民の税金ですから、この地域の将来の発展を本当に考えるのであれば、それがどのような効果をもたらすのかを真剣に考えるべきです。
 最上に必要なのは、逆に都市部のお金を地域に呼び込む地場産業を育てることです。いかにして地元から価値を生み出して、それを消費地へ届けるのか、その発想をかたちにして計画、実行していくことが地域振興として必須だと思いますね。

◆若者の印象をお聞かせください

 落ち着きがありますね。しかし、裏返して言えば元気がないということで、昔のようにハメを外すような破天荒な人は見当たりません。どこか諦めに似た空気感があるような印象です。これは、若い人の所得が低さがこういった不活発さの原因になっていると思いますし、これは可哀想なことです。頑張れば報われる、そんな社会を作ることが、我々大人や経営者の未来に対する責任だと思っています。


05c.jpg平成21年度入社 伊藤修大さん

◆どんな仕事を担当していますか

 私は、マッシュルームの植え付けや、発生するまでの生産管理業務を担当しています。具体的な作業としては、まず培地を作るところから始め、堆肥が使えるようになるまでに約1週間が必要で、その後に培養床にそれを詰め菌床作りの作業を行います。そこから菌床の発酵工程が約1週間かかり、その後、培養床にマッシュルームの種を植え、そこから実際にマッシュルームの発生作業までは、約2週間ほどの期間が必要です。その後に発生を促す処理をしましてから約10日で出てきます。

◆入社までの経緯を教えてください

 もともと私は地元の高校で生物生産科で学びまして、将来はそれを活かした仕事に就きたいと考えておりました。そういったこともあり高校生のインターンシップでは、こちらの会社を希望しまして、短期間でしたが、実際に来て仕事をさせていただきました。それをきっかけとして、卒業後にこちらを希望して就職しました。

◆入社して大変だったことは

 私が入社した頃は、まだ作業にあたる人数が少なかったですので、繁忙期など時には遅くまでかかることもありました。また、同時に自分自身でも覚えなければならない仕事も多かったですから、とても忙しかったという思い出があります。作業すべてに慣れるには2年ほどかかったと思います。

◆社会人になって良かった事は

 やはりお給料をいただけることですね。自分の働きを評価していただけるのは嬉しいことです。学生時代までに、親にいろいろと負担をかけ、お世話になりましたので、給料をいただくことで親には少しでも恩を返していけたらいいなと思っています。

◆普段の生活スケジュールは

 いつもは朝6時に起床しまして、 7時ごろには出社するようにしています。それから朝の温度管理作業をした後に他の作業の準備を行い、8時から朝礼があります。午前中の仕事を正午まで行い、それから1時間ほどお昼休憩をとります。午後は夕方5時の定時まで仕事をして、その後、夕方の温度管理作業を済ませてから退社します。

◆休日はどのように過ごしますか

 たまに父親と釣りに出かけたりしますね。他は買い物などにも行きますが、特に予定がなければ、自宅でのんびり過ごすことが多いです。

◆今後どのような最上地域であってほしいですか

 私はまだ独身で子どもがいるわけではありませんのであまり深く考えた事はありません。日々の生活で感じるところは、雪の多さが不便ということだけです。逆に、地元で気に入っていることは、田舎ですからとても静かで騒音が無いことですね。
 入社した当時、千葉県に一ヶ月の研修に行ったことがありますが、そこは都市部にほど近いところでしたのでそれなりに騒がしく、自分の地元との違いを感じました。

◆将来の夢は何でしょう

 正直言いますと、あまり先のことは考えていませんね(笑)。

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温度管理のため設備機器を調整

05e.jpg作業の進捗をパソコンで管理