03b.jpg代表取締役 熊谷市夫さん

若者の時代感覚を事業に活かす
~最上地域での花き生産を先駆ける~

◆どんなものを生産していますか

 バラとリンドウを作っています。

◆最上はどんなところでしょう

 冬は厳しいですが夏はこれぐらいいいところはありませんね。花や野菜、米に関しての栽培条件が良いところだと思います。寒暖差の大きさが植物の品質を高めてくれる大事な条件ですから、花に限らず野菜や米に対しても良い地域ですよ。
 花については、例えば西の地方の日中の暑さは成長生育を促しますが夜は冷えない分だけ色合いなどのバランスが崩れ、良いものは出来ません。それは高温障害と言うものです。その点最上地域は、夏は暑く夜は気温がスッと下がりますので、とても適しています。そういった寒暖の差が最適の生産の中心地は、これまで北関東でしたが、最近の温暖化の影響で徐々に東北地方へと移ってきました。これから山形県は植物栽培の中心地になっていくと思います。

◆どういう経緯で創業しましたか

 私は鮭川村の農家の出身で米を作っていました。若い頃から米農家に限界を感じていまして、ある日親に反発して家を飛び出したんです。行く宛ても無く一晩考えた挙句に、とりあえず花の先進地を見てみようと長野県に向かいました。飛び込みで出会った農家に頼み込み、住み込みでの仕事をさせていただくようになりました。それがリンドウ農家でした。数年の間そこで花農家の修行をして経験を積んだ後に地元に戻り、リンドウの生産を始めたのです。

◆リンドウから始められたのですね

 バラという花は、結婚式や誕生祝いなどによく使う、これから世界に羽ばたく人に向けての歓迎の花なんです。ところがリンドウはその逆で、故人に手向ける花、あの世へ送り出してあげるという意味なんです。 当社は、歓迎やお祝いを彩るバラと葬儀に飾られるリンドウの両方を生産していますので、人生のその時々の場面において使い分けることのできる二つの花を持っているという強みがあります。
 リンドウから始まった会社なのですが、主要生産品をバラに切り替えた後もリンドウは止めませんでした。私自身がこれで事業を起こしたという名残惜しさもあったんでしょうね(笑)。

◆バラのイメージが強いです

 バラ専業でも良かったのかもしれません。しかし、景気の浮き沈みや、自然災害による需要の低下など、花の需要は人々の心や社会の雰囲気を如実に映すものです。そういった変動のリスクに対して、複数の種類の生産は意味のあることです。
 東日本大震災の時も、一気に低下したバラの需要を、惜しんで取っておいたリンドウの売り上げが補う形で会社を救ってくれました。やはり私にとってリンドウは特別な花だと思っています。

◆若者にどんな資質を求めますか

 当社は、ネット販売で直接お客様にお届けする事業も展開しておりますので、お客様の手元に届いた時点で最高の咲き具合になるよう、時間を逆算して収穫と発送ができるようになるには、それなりに経験が必要です。後は、その時代ごとに花の色や品種の組み合わせ、包装の仕方などの流行があります。そこには、若い方の感性や時代感覚を活かして頂ければありがたいと思います。
 当社では、1件ごとの注文に対応して、たくさんの品種のバラとそれぞれ異なる組み合わせを、毎日全国に向けて発送しています。その組み合わせたるや膨大なものです。しかもバラ1本1本を丹念に確認し、わずかな傷も見逃せません。何本もの出荷の中で、1本だけの傷でも、その箱の中の全てが傷モノ扱いになりますから。そういった細かくて確実性も求められる作業を、忍耐強く行っていく能力は、私とて若い人にはかないません。そこは本当に頼もしく思っています。
 私は65歳にもなりましたので、そういった若い人の能力を信じて仕事を任せています。当社だけでなく、これから最上地域の産業も、実際に次世代にバトンタッチしていかないことには、若い人は育たないと思います。


03c.jpg平成23年度入社 佐藤真喜子さん

◆どんな仕事を担当されていますか

 主に小売とネット販売を担当しています。担当を始めてもう5年ほどになりますね。私は、以前に花屋さんでアルバイトをした経験がありましたので、花を扱うことには少し慣れておりましたし、お客様とのやりとりにも経験がありました。その頃にこちらの会社でインターネット販売を伸ばしていきたいという意向を伺い入社させていただきました。そのように、私は入社した当初から小売を伸ばす目的で採用していただきました。
 また、ネット販売だけではなく直接ご自分で買いに来られるお客様もいらっしゃいますので、その時には対面での販売も行っています。

◆仕事で大変なことはなんでしょう

 ウェブサイトでは、もちろん 製品画像でバラの写真を掲示していますが、現物を目の前にしてみるわけではありません。ですからお客様の注文も、これとこれというように現物を指定するわけではなく、花束のイメージによるご指示が多いんですね。例えば、優しい雰囲気が欲しいとか、華やかな花束が欲しいなど、お客様が花に求めるものを表現する際にはそういった抽象的な言葉によるご要望がとても多いんです。そこから、ご満足していただけるものをお手元に届けるまでに、電話やメールなどで連絡を取りながら、より具体的に形にしていく作業というのがとても難しいですね。それだけに、届いた後、とても良かったというお返事を頂けた時などにはすごく嬉しいですね。

◆クレーム対応も担当されているとか

 はい。扱っているのは生花ですので、当社から完璧なものを出荷したとしても輸送事故のリスクもあり、なかにはお手元に届いたときに傷がついてしまっていたという場合もあります。そういった時にはお客様にお詫びや代替品の手配など、誠意を持った対応をすることが何より大事です。その後で一番大切なのは、なぜそういった事故が起こったのかを調べ、今後、同様のトラブルが起きないように対応を改善していく事に尽きます。精神的に負担のかかる仕事ですので、自分自身のメンタルも気にかけてあげないといけないですね。私は友達とおしゃべりをすることでストレスを発散します(笑)。

◆入社を考える方へアドバイスを

 バラの生産現場はハウスですから夏場はとても暑いですし、逆に花束を加工する場所はとても寒かったりもしますので、何よりも体力が大切です。普段からしっかり3食食べて規則正しい生活を送ることや、普段から適度な運動を心がけるなど、体力の維持が大事ですよ。

◆これからの夢は何でしょう

 私はモノを作ることが好きで、今は雑貨を作ったりしています。ワイヤーアートと言って、綺麗な石をネックレスなどに加工します。できれば、そういったものを花と合わせて、生活の彩りや潤いとしてお客様に喜んで頂けるように提案できるようになったらいいなと思っています。まだまだ趣味の段階ですが(笑)いつか実現したいですね。

03d.jpg
花の組み合わせ作業

03e.jpgウェブサイト管理作業